Eclipse 3

before the melody 3-5 ページ29

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『私ね……もっと、ボーカリストとして

胸を張れるようになりたいの。』









「そっか……

でも、それと悪質なファンレターって

関係ある？」









『耳触りのいい言葉だけを聞いて

裸の王様にはなりたくないから……

どんな意見も受け入れたい。』









「……自分から傷付きにいくの？」









『うん。

でも、ただ傷付くだけじゃなくて

ちゃんとそれを糧にして進みたい。』









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「…………強いな、Aは。」









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渉さんの瞳が、複雑に揺れる。









『渉さん……？』









漏れた言葉は

本当に私に向けられたもの？









視線は確かに私を見ているけど……









「ああ、ごめん。」









絶対に今、渉さんは私じゃない

誰かを見てた。









『どうかしたの？』









「俺の知り合いの昔に

似てんなぁって思って。」









『知り合い？』









「そう。TONIGHTのアレンジをさ、

してくれた奴。」









あの喫茶店の彼……？









名前は確か……









『ミツ？』









「うん、そう。

A、似てるよ。昔のミツに。」









渉さんの瞳に、また複雑な色が浮かぶ。









ああ……そっか……。









透さんも時々見せるこの色は……

郷愁の色……。









懐かしさのフィルターが1枚かかった

少しだけ色褪せた過去の。









それは、儚くも戻れない……

美しい想い出の色をした瞳だ。









『彼……今は？』









「さぁ？どの辺にいるかな？

でも、今年ももうすぐ帰ってくるよ。」









私の記憶の中で、

闇色の瞳をした彼が……甦る。

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