K〜ココロのキズ〜

＃２７ ページ28

A side


逃げてきてしまった。

まだ、私を狙ってるって決まったわけじゃなかったのに。

・・・でも。

人の心の中は、その人にしかわからない。

本当は何を考えているかなんて、本人にしかわからないんだ。

私は、それで何度も何度もひどい目に合ってきた。

私が、その人の本音を聞いたとき。

なんて言われていた？

その人たちは・・・









私を、『化け物』と言っていた。









確かに、私の能力なんて、普通の人たちには理解できない。

裏社会を知らなければ、私の力なんて、知ることはない。


それは、わかってる。


でも。

私だって、１人の人間なのだ。

この力をとったら、ただの女の子なのだ。

それなのに。

『化け物』なんて。

いい時は好きに利用するくせに。

いざ、自分に都合悪くなったら、『化け物』呼ばわりする。


私が十束さんに拾われる前は、どうだった？

その前は？

私を狙って、公共の場でナイフを振り回してた人を見て、その時お世話になっていた人はどうした？



・・・逃げたのだ。


私を、置き去りにして、身代わりにして、逃げた。

周りの人は、何をしていた？


遠巻きに見ていただけ。

警察も呼ばず、ただ、怖いとつぶやきながら、遠巻きに。

見て見ぬふりをしていた人もいた。

人とは、そういうもの。

仲がよかろうが、肉親だろうが、いざ自分が危険な目に合うと、掌をかえすように。

人を犠牲にして、周りを巻き込んで、自分だけ助かろうとする。

最初は、怖いのは当たり前だ、しょうがないと思っていた。

最初は、そう思っていた。

何度も何度も同じことを繰り返して。

居場所を失っては、拾われ、失っては、拾われ。

繰り返すうちに、人を信じなくなった。

＃２８→←＃２６

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す