りんごジュース (ページ16)

今日:8 hit、昨日:3 hit、合計:558 hit

りんご型爆弾大事件【7話】ページ16

「まあ、こんな感じだが、どうだ公平くん。何かわかったかね」
「ええ、とりあえず一つは」
さすが、平ちゃん。もう何か掴んだのか。
　
公平は容器に近づくと、鑑識さんから金づちを受け取り、容器の一部を破壊し始めた。
「公平、何してるんですか！公くんではあるまいし」
「公平くん！大事な物証に何をしているのかね！」
　
すると、公平はこちらを振り返り、容器の一部を私たちに見せた。
「いや、警部。あなた達が見落としていた点が一つありましてね」
そういって公平は容器に手を突っ込むと、小さな黒い物体を取り出した。

「なんだい、公平くん、それは」
「盗聴器ですよ、警部。犯人は俺たちの会話を全て聞いているんです。恐らく何か不審な行動をとれば、すぐに爆発させるんでしょうね」
「なんだと！！」
「とにかくここは犯人の要求通りにりんごジュースを集めた方がよさそうですよ」

その言葉を聞いた内村警部は、すぐさま携帯を取り出し電話をかけた。部下にりんごジュースの収集を命じているんでしょうか。それにしても内村警部は公平の言いなりですね。
「ちょっと、泉ちゃん。こっちへ」
公平に呼ばれ、耳を貸してくれと言われた。

そこで聞かされた話はこうだ。
「２カ月前に、軍真で起こった事件覚えてる？」
「ああ、あの金持ちのおじいさんの事件ですか」
「それそれ。多分、そこの息子が今回の犯人だよ」
「何ですって！？」
　
２カ月前の軍真の事件とは、公くんがやらかした事件でしてね。
依頼主は寺岡任三郎というおじいさんで、探偵の仕事としてはありきたりな初恋の人を探してくれという依頼でした。しかも依頼料がすごく高額で、公平は即決で引き受けたのですが、そのおじいさんの家がこれまた広いんですよ。

案の定、資料を預かりに来訪した時に、公平が騒ぎまくって、いかにも高価なツボを割りましてね。おじいさんは、わははっと、笑っていたんですが、その息子さんが真っ青な顔をしていたんですよ。そのあと、私が公平に説教しましてね。

「何があっても物にさわるな。飲み食いなんて厳禁ですよ。あなたは何をするのか予測不可能なんですから」

と言ったんですよ。その後、おじいさんがジュースを出してくれたんですが、これがりんごジュースで。公平は私に怒られたものだから、飲むこともできずに涙目で睨みつけていたことがあったんですよ。