2 side M ページ28
まだクッキーを頬張る相葉さんを見ると、目が合った。
俺がこの家に来た時、憑いていたという蜘蛛の脚は、俺には視えなかった。
きっと今も、気付かぬまま通り過ぎてしまっているものが沢山ある。
願いをかける人には、それが分かっているのかも。
「視えないことが、悪いことじゃないでしょ。」
眉間に皺寄ってるよって、相葉さんは笑って。
「視えないものはしょうがない。視えないんだから、考えたって仕方ないと思うよ。」
視えないモノが在るんだって、気付けたことが大切なんじゃない。
クッキーを摘まみながら、そんなことを言う。
「それにさぁ、視えることが良いことばかりじゃないよね。」
「なんで?」
「うーん…例えばさぁ…。
山ん中とか歩いてると、偶に細かいのがいっぱいもぞもぞしてんの。虫みたいなんだけど虫じゃないんだよねぇ、なんだろあれ。あれ見つけちゃった時は、俺その道怖くて通れないもん。」
相葉さんが指をもぞもぞ動かして、気持ち悪い!って言ってるけど。
なんだろうそれ。俺は視たことねぇな。
「松潤は、月の顔は分かる?」
「月の?顔なんか…あんの?」
「俺はね、分かるの。あ、今日は嬉しそうとか、寂しそうとか。どんな表情してるのか。
お月見の時なんか困るよ。こっちは団子食って楽しんでんのに、あっちは怒ってる時とかあるからね。
あと、月にウサギがいるっていうのがどうしても分かんない。」
俺にとって月は、他の星と同じ。
形を変えて、夜空を照らす衛星。
ただただ、美しいモノ。
「あとは…。あ、そうそう。」
相葉さんは立ち上がって、窓を開けた。
「“視えるヒト”はきっと。
空が広いこと、知らないよ。」
広くて、高くて、どこまでも遠い。
限りなく空虚で、やわらかく、あたたかい。
この空に何かを視るヒトは、きっとこんなにも澄んだ空を知らない。
「だから何て言うか…視えても視えなくても、楽しいことには変わりなくって…、」
「つまり、人生気楽にいきなさいってこと。」
相葉さんが結論に困っていたら、ニノが二階から降りてきた。
リーダーが帰って来ないのを良いことに、自分の部屋のように居座っているらしい。
いや、それよりも。
人生気楽に?そんな話だったか?
「潤くんは考え過ぎ。もっと肩の力を抜いたらいいのに。」
「そうか?」
「視えないままの方が、妄想できて楽しいじゃない。」
「そーそー、色々妄想できるよね。」
「せめて“想像”って言ってくんねぇ?」
329人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
totto(プロフ) - 初うさぎさん» 初うさぎさん、はじめまして。コメントありがとうございます。すみません今頃気付きました(>.<) 温かくなってくださいましたか?とっても嬉しいです(^-^*)今後もよろしくお願いします。 (2015年12月31日 11時) (レス) id: c840215f83 (このIDを非表示/違反報告)
初うさぎ(プロフ) - はじめまして・このお話の世界観に惹かれ、一気に読ませていただきました。素敵なお話が多く、心が温かくなります。これからも楽しませていただきます。では続きにいてきま〜す(#^.^#) (2015年12月20日 9時) (レス) id: 6cde87a74e (このIDを非表示/違反報告)
totto - かえさん» かえさん、こんにちは。過去編で重めの話が多かったのであったかいのも書きたいな、と。いつもコメントありがとうございます(^ー^)更新頑張りますね! (2015年5月13日 0時) (レス) id: 03ed178ab0 (このIDを非表示/違反報告)
かえ(プロフ) - tottoさん。お久しぶりです(^^) お題:あい。素敵ですね。そのすべてがその場所に…いつも更新を楽しみに待ってます(^^) (2015年5月10日 21時) (レス) id: 80843bd474 (このIDを非表示/違反報告)
totto - レイカさん» レイカさん、はじめまして。コメントありがとうございます。お褒めいただき光栄ですo(^-^)o 文才...ありますかね?これからも精進いたします。 更新はとても遅いですが、今後もよろしくお願いしますね。 (2015年4月12日 18時) (レス) id: 03ed178ab0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:totto | 作成日時:2014年12月2日 22時