水溜りでボンドな日常3 (ページ25)

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Aside

イベント当日＿

大勢の人が忙しなく行き交う大きな会場に、改めて規模のすさまじさを感じる。

『じゃあ、リハの前に呼びに戻るから2人は楽屋でちょっと待機しててね』

会場について早々、楽屋入りして生配信の準備をする2人に声をかける。

ト｢了解｣
カ｢え、Aどっか行くの？｣

『私は挨拶とか事務所の方でやる事あるから、』
カ｢えぇー｣

不服そうなカンタに背を向けて後でね、と後ろ髪引かれる思いで楽屋を出た。

お偉いさんへの挨拶、事務所のお話、お弁当の準備...
なかなか忙しい、

『わわっ、もうこんな時間』

バタバタと会場を走り回っている間に、リハーサル開始の時間になっていた。

急いで2人の楽屋に戻ろうと駆け出した時、

｢Aさん！トミーさんが倒れたって...！！｣
『...え？』

。

。
。

カンタside

トミーが、倒れた。

車椅子で運ばれるあいつを見て、一瞬目の前が真っ暗になった。

｢とりあえず、トミーさんは病院へ行きました。本番はどうしますか？中止という判断も...｣

一人楽屋に残った俺の周りにはたくさんの大人達。
みんな俺の言葉を待ってる。どうすればいい？

カ｢えっ、と...｣

トミーの様子が変なのはちょっと気づいてた。日頃の疲れが溜まってるのも分かってた。

俺なら何かトミーの手助けが出来たんじゃないか？
こんなにぼろぼろになる前に止めれたんじゃないか？

焦りでまるで思考がまとまらない。

｢カンタさん、本番まであと6時間しかありません。リハも終わってない...どうされますか？｣

中止？トミーなんて言うだろう。

こんな時トミーなら、ばしっと判断してみんなをまとめるのに、

どうすれば...

『カンタ！』

聞き慣れた声に、はっと顔を上げる。

分厚い大人達の壁をかき分けて飛び込んでくるAの姿。

カ｢A、！｣

俺の元にたどり着いたAは、ハァハァ肩で息をしていた。

『大丈夫！私はトミーの所に行くから、カンタだけでもリハ進めて。絶対連れて戻るから、ね？』

暗い感情で渦巻いていた心が、すーっと晴れていく感じ。

カ｢分かった、ありがと。トミー頼んだ｣

『うん！任せといて。カンタも頑張ってね』

一瞬微笑んで、早口で指示を出しに走り出すAの背中を見つめる。

『付き添いは私が行きますのでリハーサルはカンタだけで進めてください、連絡は...』

こういう時に改めてどれだけ支えられているか実感する。

気合い入れろ、俺。