第二話 ホグワーツ特急 ページ9
九月一日。
私は両親と共に、キングス・クロス駅に来ていた。駅には、渡された切符がポートキーも兼ねていたらしく、切符を持ったら駅の裏側に転移した。魔法は色々と便利だな、とお父さんがぼやいていた。
キングス・クロス駅構内は、多くの人が行き交い、ぼんやりしていると人の波に呑まれそうになる。
カートにトランクを積んで、私たちは9番線と10番線の間の壁の前に立った。
「行くよ。せーの!」
皆でカートに掴まりながら、走って壁を通り抜ける。出た先は、9と3/4番線。紅の汽車がホームに止まっていて、あちこちで家族が暫しの別れをしている。
私も両親に向き直り、抱きついた。
ホグワーツは全寮制だから、次に会うのは冬休みになる。
「A〜。嫌だったら、いつでも帰ってくるんだぞ〜」
「もうお父さん。それはダメだから。冬休みにね」
お父さんがウザいくらいに絡んでくるので、さっさと離れる。良い年こいて、泣いてるし。
「気をつけるのよ、A。しっかり勉強して、友だちをたくさん作ってね。土産話を楽しみにしてるわ。……あと、学校生活を楽しんで」
「うん!」
お母さんは私の頬を優しく撫でると、そっと私の背中を押した。
「行ってらっしゃい」
「気をつけてなA〜。彼氏は作るなよ〜」
「もうお父さんたら!」
「冗談だよ。行ってらっしゃい」
「行ってきます!」
お父さんの発言に呆れるけど、暫くは会えないから、やはり少し寂しい。
それでも、魔法学校への期待もある。色々と不安なことはあるけれど、それ以上に学校生活が楽しみだ。
私は一つ深呼吸をすると、紅の汽車に乗った。
汽車の中には複数の個室があり、日本の列車とはだいぶ違っていて驚いた。
個室はどれも埋まっていて、やっと端の方に空いている個室を見つけた時には、もう汽車が発車していた。
私はトランクを席にほおって、窓を開ける。ホームに立った両親が手を振っていた。それもだんだん小さくなり、最後には見えなくなる。私は窓を閉め、トランクを棚に上げると席に座った。
籠から出したステラが早速、私の膝の上で丸くなる。
その背中を撫でながら、教科書を読んでいたその時、
「ごめん、入っていいかな? 他はほとんど埋まってたから……」
個室の入り口から控えめな声がかかった。
顔を上げると、トム・リドルが立っていて、私は目を見開く。彼も驚いたように、こちらを見ていた。
「……ええ、どうぞ」
「……あ、ありがとう」
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作者名:オムとセナときどきパール | 作成日時:2020年2月24日 16時