第五話 仲直りの宴 ページ37
無事仲直りした私たちは、そのまま歩いて地下に向かった。
どこに向かっているのか気になってトムに行き先を尋ねてみたが、「つけばわかるよ」と言われてしまった。
ムッとしてトムを見たとき、私は彼を見上げていることに気がついた。入学当初は、同じ目線だったのに、今はトムの方が少し高い位置にある。
「トム、大きくなったね」
「え? そうかな」
トムは驚いたように私を見たが、彼の方も私を見下ろしていることに気がついたようだ。
「Aが縮んだんじゃない?」
「もう……」
悪戯っ子のように笑ってからかってきたので、彼の腕を軽く叩いた。
「失礼ね。少しは伸びたわよ……多分」
「ごめんごめん。確かに、最近Aは変わったね」
「え、そう?」
「魔法が前より上手くなった」
「勉強に割ける時間が増えたからよ」
「友だちも増えたんじゃない?」
「セシルとエミリーのおかげ」
「更に大人になった」
「……ありがとう」
そんなに手放しに褒められると、恥ずかしくなる。それでも、トムに褒められると、他の人に褒められるより嬉しいのは何でだろう。胸も凄いドキドキするし。
「あと、そうだな……気まずい時、俯かなくなった」
トムは人指し指を立てて、そう言った。
確かにそうだ。さっきだって、気まずい空気だったけど、私はトムを真っ直ぐに見れていた。成長した印かな。
「トムはますます女の子たちにモテるようになったわね」
私は嫌味っぽく言ってやる。私というお邪魔虫がいなくなったせいか、前より女の子たちのアタックが多くなっていた。
「何? 嫉妬?」
「違うわよ」
トムが嬉しそうに顔を覗き込んできたので、反射で否定してしまったが、彼が他の女の子に言い寄られているのを見るたびに、モヤモヤとした気持ちが湧き上がったのは事実だ。
変なの。前まで、仲の良い男の子が他の女の子と話していても何も感じなかったのに。
「僕はAが他の男の子と話してるのは、見たくないなあ」
「……え?」
「むしろ、Aに近づくなって思う」
私は思考が追い付かなくて、ポカンと口を開けてしまった。
え? どういうこと? もしかして、トムは嫉妬してるの?
トムから向けられた何かを察知して、私はジワジワと赤面した。
「もう、冗談を言うのはやめて」
赤面しているのを見られたくなくて、私は彼を追い越して地下への階段を降りた。「冗談じゃないんだけど」という後ろの声は聞こえないふりをして。
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作者名:オムとセナときどきパール | 作成日時:2020年2月24日 16時