第四話 黄昏の少年 ページ30
「びっくりしたけど、もう大丈夫」
少しだけ低い、澄んだ声が降ってきた。
「マダム・ポンフリーのおかげで、もう
こんな時、優しくされると泣きたくなるのは、何でだろう。
胸が締め付けられるような感じがして、同時に涙が
今日は色々なことがあった。
知らない生徒に嫌がらせを受け、無関係の男の子に酷い怪我を負わせてしまい、みんなの目の前で侮辱された。心配してくれたトムとは喧嘩をして、謝ることもできていない。
なんて
涙をなんとか堪えて頷いたけれど、トワイライトは見抜いていたようだ。
「ビーリー先生が、版書を写して毒キノコのスケッチをするようにって。君の分はこれ」
トワイライトが話題を変えてくれたおかげで、気は
「トワイライト、まさかあなたも補習なの？」
「そうだよ」
それを聞いて、再び申し訳なさで胸がいっぱいになる。
本当に、大変な迷惑をかけてしまった。
「カノン……」
「……え？」
「その……呼ぶんだったら、名前で呼んでくれると嬉しい。ファミリーネームで呼ばれると、よそよそしくて嫌なんだ」
私は目を
目の前のレイブンクロー生は仕返しをするどころか、気のせいでなければ、私と打ち解けようとしてくれている。
私は戸惑いながらも、その提案に乗ることにした。
「じゃあ、カノン。私はA・Aよ。私のこともAって呼んで」
自己紹介もそこそこに、私たちは補習に取りかかった。
まず、前の黒板に書かれた版書を羊皮紙に写していく。
途中、カノンに凝視されているのに気づいて、そちらへ視線を向ける。
「Aって、綺麗な字を書くよね」
「……え？」
思いがけない褒め言葉に、私は目を丸くした。見ると、カノンの手元には私より先に始めていたのに、まだ半分しか書かれていないノートがあった。
再び罪悪感が沸き起こる。どうして、気づかなかったんだろう。
カノンは顔の半分をガーゼで覆っていて、目が見えづらいのだろう。それでは作業が
「目、見えづらいでしょう？ 版書は私がやるわね」
「え、良いよ。そんな……」
遠慮するカノンから無理矢理ノートを取り上げ、彼の分の版書を写していく。
「大丈夫、気にしないで。スケッチはできる？」
「あ、うん。……ありがとう」
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作者名：オムとセナときどきパール | 作成日時：2020年2月24日 16時
