6話 【ユリア】 ページ7
「理紗ちゃん、大丈夫?」
起きて暫くぼう、としていたら、仕事帰りだからなのか、堅苦しい踊り子の衣装を纏う巴様が、私の顔を覗き込んだ。刹那ふわりと、お酒の香りと桃の香りが漂う。――――桃の婚礼式だ。
桃の婚礼式とは、まだ成人もしていない男女の結婚式のこと。昔は小さな家の婚礼式でも【パララファーリイ】が呼ばれて、和気藹々とした雰囲気漂う婚礼式だったらしいが、今では貴族の儀式のようなものになっている。儀式的な格好をした面々。制限された【パララファーリイ】達の姿。歪む顔。時においていかれた者のみが味わう辛苦。
「びっくりしたのよ。仕事終わりに突然お父様が真っ青な顔をされて走ってきて。理紗ちゃんがなんとかっていうから、私もつられちゃって」
「あ、ごめんなさい。私、昨日」
「謝らなくていいのよ。それにしても、昨日はどうしたの? 倒れてた、って遥斗はいってたけど」
昨日のこと、その言葉に背筋がぞくりとする。そう、昨日はあいつがいた。またあの気持ち悪い笑顔で相も変わらず笑っていて、それが怖くて憎くて。
「あいつがいた。いつも私をいじめるあいつが。いたんです」
「あいつ・・・・・・ああ、昨日来た使者のこと」
苦虫を噛み潰したかのような巴様の顔。その顔が今は不思議と安心できて。あふれでた涙を無視する。慣れない暖かさが包む体がどこか信じられずに拳を握りしめる。
違和感が覆いつくしたままの体を巴様の体温がさらに覆いつくしたところで私はやっと、涙を流せた。
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ましら(プロフ) - fruitさん» 返信遅れてごめんね!そう言ってくれて凄い嬉しい!読みにくいし作品はバンバン消すわの私の作品を追いかけてくれるなんて、凄い嬉しいよ。fruitちゃんの優しいところ凄い好き。コメントありがとう! (2017年9月16日 21時) (レス) id: 512c5a6245 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - おおー!またもや面白そうな作品で・・・!この作品も追いかけさせていただきます(^。^)更新頑張ってね!! (2017年7月26日 21時) (レス) id: e09a409b3e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましら | 作成日時:2017年1月30日 16時