貴方の綴れに生命の音を (ページ10)

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『カラン…』

アンティークな木目の茶色の扉。

その上についたベルは

しばらく余韻を響かせる。

丈「お邪魔しま〜す」

まだ開店前の店内はしんと静かで

奥の厨房から、微かに音が聞こえた。

あ！

という声がして、足音が近づいてくる。

「丈さん！」

薄暗い空間から出てきたのは

紫のエプロンに爽やかな笑顔。

ここ、

“ビストロほとけのざ”のオーナーシェフ。

丈「おはよう、恭平。」

ちょうどランチの仕込み中だったのか

手はびしょびしょで、

それをエプロンで拭いていた。

恭平「丈さん、仕事は？」

丈「今日は当直やから、ちょっと遅いねん。

やからこれ返しに来た。ありがとうな。」

差し出すのは、さっき助手席に置いた紙袋。

恭平「うわ、洗ってくれとる！あざっす！」

昨日、飛鳥の誕生日パーティにと

恭平が作ってくれた料理の皿。

丈「美味かったわ笑子どもらも喜んどった。」

恭平「ほんまっすか、めっちゃ嬉しい笑」

近くの机に紙袋を置いた恭平は

時間あるならコーヒーでも、と

近くのカウンターに移動して

俺を席に勧めた。

丈「ええん？忙しいやろ」

恭平「大丈夫っす。そろそろ謙杜も来るし。」

と、恭平が言った矢先。

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