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「……ちょ、お前らなにしてんねん!」




その瞬間を見て、思わず声をあげてしまったのは

他でもない青年である。



「あ?」


「なんやお前。」



青年は、自分が妊夫であることも忘れ

婦人に駆け寄った。



「大丈夫ですか?」


「あ、いや…、、」



そして少年達の方を向くと、


もう少しで圧死するトマトを靴の下から救い出し、


持っていたハンカチで表面を拭った。



「もう大丈夫やで。」



彼は赤い野菜に声を掛け、

それを老婦人に渡す。



「お前ら、食べ物粗末にしたあかんやろ?」


「は?」


「やば、何こいつ、笑」



彼の職業は料理人だった。


ちょうど今も、自分の経営するレストランへ

出勤する最中だったのだ。


彼にとって食材は

大事な商売道具であり、

並々ならぬ愛情を注ぐ対象でもあった。


それを粗末にする行為は

愚行極まりないと、

どうしても彼は許せなかったのだ。



「このトマトさんやってな、

農家さんが頑張って頑張って……


こうやって冬に出荷する努力までして、

ここに届いてんねん。」



老婦人の手元には、

磨かれた赤の果菜が光っている。



「トマトさんも生きててん。

それを俺たちが刈り取ったって

理解しなあかんよ。」



彼はこうして、

潰れたトマトをパックに戻しながら

少年達を諭した。



「ほな、行きましょか?

お荷物お持ちします!笑」



老婦人に向き直り

輝く笑顔を見せるが、


……その背面からは黒い影が迫っていた。



「……ちょお待てや。」


「どこ行こうと、してんねん、っ…!!」








その声に青年が振り向いた瞬間

その頬に拳が飛んだ。



「っ…っ!!」



彼は、咄嗟に

自分の大きな腹に手をやった。


体はバランスを崩し、

そのまま地面に倒れ込んでしまう。



「…偉そうに説教しやがって。」



青年に、3人の不良が迫ってくる。

その後ろで老婦人は震えていた。



「……逃げてください、!」




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まつだいら(プロフ) - Rioさん» コメントありがとうございます!また落ち着いたら、色々と書いていきたいです!読んでくださりありがとございました!✨ (2022年8月19日 16時) (レス) id: 086f901055 (このIDを非表示/違反報告)
Rio(プロフ) - 主さんのお話大好きです!!ぜひ裏設定も読みたいです!! (2022年8月18日 16時) (レス) @page45 id: 9d6c92ab72 (このIDを非表示/違反報告)
まつだいら(プロフ) - 莉里さん» ありがとうございます!オメガバは需要が少ないと思っていましたが沢山の方に読んで頂けて本当に嬉しかったです!また戻ってこれた際は是非、よろしくお願いします! (2022年8月13日 6時) (レス) id: 086f901055 (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - 完結おめでとうございます。オメガ設定は数少ないので、とても好きな作者さん、作品のお一人です。いつか戻ってきてくださることを楽しみにしています。 (2022年8月12日 21時) (レス) @page45 id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
まつだいら(プロフ) - ayさん» ありがとうございます!読んでいただけて、温かいコメントも頂けて本当に嬉しいです!もう少しで完結ですので最後までお付き合いお願いします! (2022年7月31日 0時) (レス) id: 086f901055 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まつだいら | 作成日時:2022年7月19日 19時

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