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歯を磨いて、明日の準備も終えると


俺は和室へ足を運ぶ。




丈「よいしょ、。」




部屋の真ん中に吊られた紐を引くと

電灯はてんてんと点滅して、

小さな仏壇がパッと照らされた。



俺はその前に腰を下ろし、


丈「ほい。」


手に持っていたケーキを置く。



丈「星空の作ったショートケーキです。」



和也くんにあげてください、って

帰る時、恭平に持たされたやつ。



2人の勉強の邪魔にならないように、

静かにちーんと鳴らして手を合わせた。





丈「星空が作るケーキ、

苺使ってるんが1番美味いらしい。」




丈「飯もな、お前に負けへんかもなぁ。笑」




丈「飛鳥はやっぱり俺に似て

料理させたらほぼテロやで。笑」





相変わらず返事のない一方通行の会話。


それでも、俺には聞こえる。



お前の声が、鮮明に。



あの日からずっと、俺に。


語りかけてくるお前の声が。



俺たちの音も、お前の声も

ずっと止まずに鳴り響いている。



お前と俺で綴った、俺たちの世界で

今もずっと。



忙しなく音を掻き鳴らす。


生きてる証拠を、ここに轟かす。



この音は叫びだ。



俺とお前が愛した生命の


“生きる”という強い叫び。




ずっとここで鳴っているから。


お前の傍で鳴らしているから。



お前が傍で聴いてくれるから。





お前の片割れに愛を込めて。




お前の遺したこの世界に、

俺はお前と生きる。


死ぬまで、ずっと。



この音が消えるまで、ずっと。








丈「食ったら歯磨いて寝るんやで?

……って、2人に言い忘れたわ。笑」



俺はゆっくり立ち上がり、


また紐を引いて、電気を消す。




丈「ほな、また明日な。」




廊下から漏れた光で

暗がりに浮かぶ、小さな遺影。



どんなに時間を経ても風化することは無い

きらきらと輝く愛おしい笑顔。











丈「おやすみ……和也。」












──END──

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まつだいら(プロフ) - Rioさん» コメントありがとうございます!また落ち着いたら、色々と書いていきたいです!読んでくださりありがとございました!✨ (2022年8月19日 16時) (レス) id: 086f901055 (このIDを非表示/違反報告)
Rio(プロフ) - 主さんのお話大好きです!!ぜひ裏設定も読みたいです!! (2022年8月18日 16時) (レス) @page45 id: 9d6c92ab72 (このIDを非表示/違反報告)
まつだいら(プロフ) - 莉里さん» ありがとうございます!オメガバは需要が少ないと思っていましたが沢山の方に読んで頂けて本当に嬉しかったです!また戻ってこれた際は是非、よろしくお願いします! (2022年8月13日 6時) (レス) id: 086f901055 (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - 完結おめでとうございます。オメガ設定は数少ないので、とても好きな作者さん、作品のお一人です。いつか戻ってきてくださることを楽しみにしています。 (2022年8月12日 21時) (レス) @page45 id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
まつだいら(プロフ) - ayさん» ありがとうございます!読んでいただけて、温かいコメントも頂けて本当に嬉しいです!もう少しで完結ですので最後までお付き合いお願いします! (2022年7月31日 0時) (レス) id: 086f901055 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まつだいら | 作成日時:2022年7月19日 19時

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