貴方の綴れに生命の音を3

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「お子さんはまだ、可能性があります。

母体と胎児、

どちらを助けるかはご家族の判断に委ねます。」



…きっと夢だろう。


きっとこれは、悪夢だ。



大きく息を吸い、天井を見上げ、唇を噛んだ。


切れるほどに強く噛み締めれば


血の味が口内に流れ込んでくる。




丈「…ぁ…、、ぁぁ…、、、」



大吾「…丈くん…、っ…」



身体が震えて、痙攣して、

制御が出来なかった。



「…どうしますか。」



今まで培ってきた警官としての決断力は

こんなときに限って用を成さない。




丈「…無理です……、無理です、っ……」




今日一日を呑気に生きていた俺には、

手に余る二者択一だった。




丈「……なんで、両方は駄目なんすか…っ、…。」




大吾から脱して、先生に詰め寄る。




丈「和也も、俺たちの子どもも…

どっちも助けてや…っ…！！」




掴みかかりそうな勢いで吐き散らすと、


後ろから、オトンの「丈！」と呼ぶ声が聞こえて。



大吾から、両肩を引き寄せられた。




丈「たすけてや…、なぁ…、…、…っ…」




処理しきれない感情を、

俺は乱暴な言動で消化しようとした。


無理だった。


蓄積されて、もう排出は不可能だった。




大吾「……丈くん。」



はやく、決断しなければ。


どちらも死んでしまう、そんなことは分かってる。


分かってる。



俺じゃない誰かが死ぬ、それも分かってる。



この夜に俺は、

大切な何かを失うってそれも……、。



……全部、分かってるって…。




丈「……か、ず、っ……」




この夜に。

何かを失うこの夜に。



俺は、得なければならない。



俺から消えた何かを相殺する、

また何かを、俺の腕の中に入れなければならない。





大吾「丈くん…、、」


丈「…、………、」


大吾「あの子に、

和也が生きた世界…、見せたげよう、…」





…、俺は……。





大吾「和也が守ったタカラモノ、…

次は俺たちが守ったげよう…、。」




和也の最後の希望を。


和也が命懸けで守ったおなかの命を。




………守りたい。







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───あ、丈くんみて！今けった！！



───はよ、生まれてこんかなぁ？







丈「…先生、……お願いします……、、」







───名前な、俺考えてん！






丈「…おなかの子、…、」






───“遥か彼方への道標となる明日を飛んでいく”






丈「“飛鳥”を……、、




助けてください…、…」






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