【ヒプマイ】 35℃、カタルシス。2 【男主】

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「僕と理津は一緒だもんね」




子供のような笑顔

その顔を向ける時、いつも一欠片の同情が含まれていること

それを否定しようにも、潜在意識の中で錆のようにこびりついた恐怖




「ち、ちが…違うッ…お前と一緒にするな」




それでも何とか言葉を紡ぐ


そして

乱数は

理津の頭を掴んで引き寄せた


深まる笑み
憐みの眼差し
額がこつんとぶつかる





「…そうだよ。僕と理津は全然違う。理津は臆病で誰かと一緒じゃないと寂しくて死んじゃうんだよ」


「なに…な、にいって」


「理津は僕がいないとすぐに危ない事するんだから」


「…は」





世話焼きな顔

それは一瞬で消え

今度は子供を叱る親の顔をする





「いつもそうだったじゃん」



「理津はまずいことが起こると、ちゃーんと、泣いてごめんなさいって謝る子だったよね」



「ひ…っ……」





理津は知っている


乱数がこの顔をした時は


恐ろしいことが起こる予兆だと


しかし理津は、まだ、なにか言おうとする
乱数がそれを目で制する





「そしたら僕が理津を守ってあげるのに」



「辛くて悲しいのも、寂しくて怖いのも全部ぜーんぶ埋めてあげるのに」



「いや、だ…違う…」





いつもとは違う反抗の残る目に乱数は顔を歪める

そして凶悪な顔を隠したとびっきりの笑顔





「僕の理津を変にしたの、誰かなあ」





理津はガタガタと震える脳で察する

まずい、と





「違うんだ乱数、聞いて…違う」





必死に弁解しようとしても

乱数はその様子を楽しむように笑うばかり





「左馬刻んとこのメガネのオニーさん？それとも一郎かなあ？……あのジジイ？」


「乱数ッ！！違う…あの人は、関係ないから…」


「ほんとかなあ」


「ほんとだよ…はは、俺が…他人に影響されるわけ、ないじゃん。だから…何もしないで、お願い」





乱数は笑う


恐怖で立ち尽くした理津を舐めるように見て

理津の頭をぽんぽん撫でる





「だよねえ。理津は人間が大っ嫌いだもんねえ」

「そ、だよ…」

「自分勝手で、馬鹿にして、そのクセ顔にはよってくるしさあ。ね？僕と一緒」

「そうだよ…大っ嫌いだ」

「ならさあ」



「どーなったって別にどーでもいいよねっ？」





乱数は笑う

その恐怖の眼差しが

糖蜜のように甘美に見えて仕方がない


だからこそ、気に入らない




「理津は昔から、助けてほしい時も、寂しい時も僕のところにきたのに。理津には僕が必要なんだよっ」

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