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「うぐッ…」
段ボール箱を台車に移動させようとして踏ん張った瞬間
腰に激痛
アイツ…滅茶苦茶にしやがって
いやまあ、俺が頼んだんだけど
「ちょっとリツ君、大丈夫?」
「はは、大丈夫です…」
店長に心配され
同僚にもからかわれる始末
結局その日は接客やら営業の対応やら立ち仕事中心にしてもらった
昨晩はどうかしていた
弱ってたからといって男と寝るなんて、何考えてんだ
二度としない
なんて考えても、この腰の痛みが消えることはないのだが…
_
意外と体力勝負のこの仕事では足腰が弱いと儘ならない
湿布貼って寝るか…
なんて爺臭いことを考えながら家路につく
昨日より深い夜
今思えば、あの幻覚と幻聴は乱数のヒプノシスマイクの効果だったのだろう
アイツ、本気だ
次アンダーグラウンドに潜り込めば、今度こそ息の根を止められそうだ
命が惜しくないわけじゃない
が
それでも俺は…
…違う
ただの贖罪と自己肯定感を得たいだけだ
それでもいい
『一周回って辛いよ』
決めただろ
自分のために動くんだって
次行動を起こせば、あの人から離れられる
…もう頼らない
あの人の厚意と好意に甘えない
嫌いなんて言っといて、本当は__もう、あの人を傷つけたくないだけだ
だから__
その時、いつからそこにいたのか、少年が立っていた
「あっやっと来た!もう、おっそいよ〜理津」
「乱数…どうして、ここに」
「僕だってこんなとこ来たくないよ!あのジジイがいる街なんてさっ」
「じゃあ尚更なんでだよ…」
「とりあえず移動しよ!……ここだと人目がウザいし」
ぼそりと呟き乱数の腕が理津の腕に絡む
傍から見ればただの仲良しに思われそうだが
それが、理津が逃げないようにするための拘束だという事は
理津自身が一番理解していた
「…移動するって、どこに」
「もー決まってるじゃん!」
「理津の家だよっ」
理津が乱数の腕を振り払う
「…いやだ」
「えーどうして?あっわかったぁ…なにか見られたくないものがあるんでしょっ」
「……は、そうだよ。しかも今家汚いしさあ、見せられる状態じゃないっていうか」
「ねえ理津」
「なに」
乱数の唇が耳元に近づく
「お前、自分の立場わかってる?」
ドス黒い声
わかっていたはずなのに、つくづく馬鹿だ俺
「お前に拒否権なんてねえんだよ」
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無月 - 2024年から失礼します。1年前にヒプノシスマイクにはまり(遅い)、寂雷先生を好きになったので読んでみましたが、2人の心情表現がリアルすぎて本人に話を聞いて書いた実話かと思ってしまうほどでした。画面も顔もびちょびちょです。ありがとうございました。 (1月11日 10時) (レス) @page42 id: 1dba4fa267 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - ぴみゃ@ごりらーさん» ありがとうございます。作中では経過時間を長めに取り、主人公と先生の中の深まりをじっくり書くことができました。僕も二人の距離感、書いていてとてもグッときます。改めて、完結までありがとうございました (2019年5月8日 23時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴみゃ@ごりらー(プロフ) - 遅くなりましたが完結おめでとうございます!主人公くんが、凄い好きで、話も深く大好きな作品で、更新が凄く楽しみでした。先生と主人公くんの会話やお互いへの思いにとても癒されました (2019年5月7日 19時) (レス) id: a355684bde (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 鉄壁炭酸カルシウムさん» 主人公は元々こんなツンデレ属性ではなかったのですがどういうわけかこんな猫系に…。わあ、嬉しいコメントありがとうございます。機会がありましたら今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました (2019年4月28日 22時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 迷い犬さん» 返信遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。二人がお付き合いした後のお話でしたがなんだかんだ書いていて一番楽しかったです。最後までありがとうございました (2019年4月28日 22時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Last | 作成日時:2019年3月31日 0時