55 ページ6
送ると言ったのだが固辞する理津の背を見送った後病院へ向かうと
どういうわけか院内がざわついた
「どうしたのだろう…」
どうやらそれはこの髪のせいらしい
すれ違うたびに看護師の子たちや患者さんにまで散々声を掛けられた
彼がしてくれたものであるということは誇らしいけれど
彼が、他の女性にもしていると考えると複雑だ
「失礼します」
「やあ、こんにちは独歩君。…独歩君?」
今日は新薬のプレゼンのために独歩が訪れる日
しかしその独歩は扉の前で硬直している
「どうしたんだい」
「せ、先生その…お、お、御髪は一体」
「ああこれかい。ふふ、今朝方結わいてもらったのだけれど、やはり私にこういった髪型は似合わな」
「いえとてもお似合いです!!」
その勢いに圧倒され少し後ろにつんのめる
「そ、そうかい。ありがとう」
鼻息を荒くする独歩
皆、似合うと言ってくれるけれど
様子を見る限り世辞というわけではないらしいが
なら、彼はどうして渋い顔をしたのだろう
「先生?」
「なんでもないよ。それでは仕事の話をしましょうか」
_
「それでは先生、また後日お伺いいたしますので」
「ええ。よろしくお願いします」
大きな病院であるため
その廊下は患者や看護師で溢れている
新薬の件、前向きに検討していただけるみたいで、良かった
これで課長に怒られなくて済む
それに最近、営業で回っても高評価を持たれることが多くて驚きだ
ディビジョンバトルの注目度を物語っている
そんな時だからこそ、お得意様の寂雷先生のところに来ると安心するなあ…
…にしても先生の髪
と、考えてた所に、看護師の会話がふと耳に入る
「…でも朝いらっしゃったときからあの髪型だし」
「ですが、奥様がいらっしゃるというお話は聞いたことありませんよ」
「同棲されてる恋人さんとか」
「年齢を考えればおかしな話ではないけれどね」
髪型…と聞いて思い当たる人物は、寂雷の他いなかった
先生のあの髪、朝からなのか
確かに今朝方、とおっしゃっていたけど、てっきりまた看護師の人に弄られたのかと思ってたけど
そこまで考え、気づく
えッじゃあアレ寂雷先生が自分でやったのか!?
いやでも結わいてもらったって
じゃあまさか、こ、こ、恋人!?
独歩のその悶々とした考えは光の速さで一二三に伝わることになり
後日寂雷は滅茶苦茶尋問された
136人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
無月 - 2024年から失礼します。1年前にヒプノシスマイクにはまり(遅い)、寂雷先生を好きになったので読んでみましたが、2人の心情表現がリアルすぎて本人に話を聞いて書いた実話かと思ってしまうほどでした。画面も顔もびちょびちょです。ありがとうございました。 (1月11日 10時) (レス) @page42 id: 1dba4fa267 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - ぴみゃ@ごりらーさん» ありがとうございます。作中では経過時間を長めに取り、主人公と先生の中の深まりをじっくり書くことができました。僕も二人の距離感、書いていてとてもグッときます。改めて、完結までありがとうございました (2019年5月8日 23時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴみゃ@ごりらー(プロフ) - 遅くなりましたが完結おめでとうございます!主人公くんが、凄い好きで、話も深く大好きな作品で、更新が凄く楽しみでした。先生と主人公くんの会話やお互いへの思いにとても癒されました (2019年5月7日 19時) (レス) id: a355684bde (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 鉄壁炭酸カルシウムさん» 主人公は元々こんなツンデレ属性ではなかったのですがどういうわけかこんな猫系に…。わあ、嬉しいコメントありがとうございます。機会がありましたら今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました (2019年4月28日 22時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 迷い犬さん» 返信遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。二人がお付き合いした後のお話でしたがなんだかんだ書いていて一番楽しかったです。最後までありがとうございました (2019年4月28日 22時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Last | 作成日時:2019年3月31日 0時