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「それで、一郎君」
「なんすか」



説教がひと段落したものの、未だ少し不貞腐れている彼に
一番気になっていることを聞く





「その…俺のこと、なんか聞いた?」

「聞いてないっすよ」

「本当に?」

「ほんとに」





…君は嘘が下手だなあ
そういう時は、「なんかってなんすか」くらいが自然なんだよ
即答で聞いてない、なんてそんなの

その嘘に、笑みがこぼれる




「気にならないの、俺のこと」

「……そりゃ、気になりますけど」

「君なら調べられるんじゃないの」



「俺は、理津さんが嫌がること、したくねえし」



「…そっか…うん」




ありがとう、一郎君

本当に優しい子だね、君は
だから余計にその嘘が染みる






「そういや、寂雷さんに、心配料を請求するといいって言われてたんだった」
「えっ…」



重い空気を換気するような明るい口調で一郎が言う
神宮寺先生といい、容赦がない



「…今ちょっとカツカツだから」
「いや別にたかろうってわけじゃ…」



違うのか
奢れって意味だとばかり




「…理津さん!!」

「は、はい」

「飯行きませんか!?」

「はい?」




割と今さっき食べたばかりなんだけど…

…それに




「今は無理。…肌カッサカサだし」

「俺がそっち行くし、むしろ奢るんで」

「ダメ」




今は
彼の知っている水城理津を保てる自身が無い
余裕たっぷりの、からかい上手のお兄さんでいられる気がしない




「どうしてそこまでするのかな…今度ちゃんと、遊んであげるからさ」




優しさに報えなくて、ごめん
そう片隅で考えながら突き放す


それでも
どいつもこいつもお人よしだ





「ああもう!!顔見るまで安心できねえ…!!」





苛立った声
ビシ、と指をさす音さえ聞こえそうだった




「今から会うのが心配料ってことで、駅行くんで、絶対来てくださいよ!!来なかったら…」




ほぼノープランだったのだろう
電話の向こうで、ええと、という声が聞こえる

その様子に、クスリと笑ってしまった




「ッと、とにかく来ないと…心配料3倍っすからね!!」




そう言ったきり通話が切れる

どうしようか

無理に会う必要はない
どうせ彼は俺の家知らないし…



失望されないだろうか

怖い



心配料3倍…か
それは、彼が3倍奢ってくれるということなのか


億劫になりながらクローゼットを開けた

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無月 - 2024年から失礼します。1年前にヒプノシスマイクにはまり(遅い)、寂雷先生を好きになったので読んでみましたが、2人の心情表現がリアルすぎて本人に話を聞いて書いた実話かと思ってしまうほどでした。画面も顔もびちょびちょです。ありがとうございました。 (1月11日 10時) (レス) @page42 id: 1dba4fa267 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - ぴみゃ@ごりらーさん» ありがとうございます。作中では経過時間を長めに取り、主人公と先生の中の深まりをじっくり書くことができました。僕も二人の距離感、書いていてとてもグッときます。改めて、完結までありがとうございました (2019年5月8日 23時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴみゃ@ごりらー(プロフ) - 遅くなりましたが完結おめでとうございます!主人公くんが、凄い好きで、話も深く大好きな作品で、更新が凄く楽しみでした。先生と主人公くんの会話やお互いへの思いにとても癒されました (2019年5月7日 19時) (レス) id: a355684bde (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 鉄壁炭酸カルシウムさん» 主人公は元々こんなツンデレ属性ではなかったのですがどういうわけかこんな猫系に…。わあ、嬉しいコメントありがとうございます。機会がありましたら今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました (2019年4月28日 22時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 迷い犬さん» 返信遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。二人がお付き合いした後のお話でしたがなんだかんだ書いていて一番楽しかったです。最後までありがとうございました (2019年4月28日 22時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Last | 作成日時:2019年3月31日 0時

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