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「何してるんですか」




シャワールームから出ると、粉々に砕けている破片の前で屈む寂雷の姿





「…ああ、落としてしまってね」

「指、血ぃ出てますけど」

「切ってしまったのかな」





なんだこいつ

さっきまで普通だったじゃないか
どうして急にこんな無愛想になっているんだ

自分が蒔いた種であることは承知しているが、それでも腹が立つ


寂雷の腕を掴む





「手当てしますよ。絆創膏どこ」

「大丈夫だよこれくらい、平気さ」

「あんた医者だろ。手、大事にしろよ」





寂雷が目を見開き
そして、辛そうに笑う

なんだよその顔





「…きみは本当に、私を溺れさせるね。一周回って辛いよ」

「…なに言ってんですか、とにかく絆創膏」

「はいはい」





寂雷が絆創膏を取りに行っている間に、既に広げられている新聞紙の上に破片を片付ける

朝食の準備は半端





「理津君」

「ん。ほら、浅いからって放置は駄目ですよ」

「…ごめん」





うわごとのように呟く

コイツ本当にわかっているのか


すると唐突にその巨体がなだれかかってくる
一瞬倒れたのかと思ったが、しっかりと足で立っている辺り、そいういうわけではないらしい



「重い」



一向に退く気配はない
ただぎゅうっと理津を抱きしめているだけだ





「いい加減にしないと怒りま_」

「ねえ理津君」



「_私の恋人になって」





はっきりと、そう言った
しかしどこか不安定で、脅迫めいている





「いきなり何を言い出すかと思えば…」

「なんでもいい、頷くだけでもいい。応えて、お願い」





腕の力が強まる
これはいよいよ脅迫だろう





「どうしたんですか急に」



「ああ、君をここに閉じ込めて一歩も外に出られないようにしたくて怖いよ。どうしたらいいのかわからないんだ。もう自分を押さえつけておけないから」





叩けば埃が出てくるとはよく言ったものだ
だが思いの外頭は冷静で、それでいてなに言ってんだこいつとは思わなかった





「もし、そんなことになったら、俺はここで死んでやりますよ。その方がよっぽど幸せだ」


「…ごめん、どうかしていた。だから、そんな無体なことを言わないでくれ」





俺だって御免だ、この情緒不安定野郎_自分のことは棚に上げるが




「キッチン、勝手に使いますよ」

「理津君料理できるのかい」

「舐めないでください」




趣味と実益を兼ねた薄給でこき使われる独身男性の必須スキルだ
そして、料理ができる男は好かれる

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無月 - 2024年から失礼します。1年前にヒプノシスマイクにはまり(遅い)、寂雷先生を好きになったので読んでみましたが、2人の心情表現がリアルすぎて本人に話を聞いて書いた実話かと思ってしまうほどでした。画面も顔もびちょびちょです。ありがとうございました。 (1月11日 10時) (レス) @page42 id: 1dba4fa267 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - ぴみゃ@ごりらーさん» ありがとうございます。作中では経過時間を長めに取り、主人公と先生の中の深まりをじっくり書くことができました。僕も二人の距離感、書いていてとてもグッときます。改めて、完結までありがとうございました (2019年5月8日 23時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴみゃ@ごりらー(プロフ) - 遅くなりましたが完結おめでとうございます!主人公くんが、凄い好きで、話も深く大好きな作品で、更新が凄く楽しみでした。先生と主人公くんの会話やお互いへの思いにとても癒されました (2019年5月7日 19時) (レス) id: a355684bde (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 鉄壁炭酸カルシウムさん» 主人公は元々こんなツンデレ属性ではなかったのですがどういうわけかこんな猫系に…。わあ、嬉しいコメントありがとうございます。機会がありましたら今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました (2019年4月28日 22時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 迷い犬さん» 返信遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。二人がお付き合いした後のお話でしたがなんだかんだ書いていて一番楽しかったです。最後までありがとうございました (2019年4月28日 22時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Last | 作成日時:2019年3月31日 0時

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