【ヒプマイ】 35℃、カタルシス。2 【男主】

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不幸中の幸いか、意図していたのか
手錠の鍵は室内に放られていた



手錠を外すと、赤黒い液が固まったものがこびりついていた
理津の手首は擦れた傷が化膿し見るに無残な状態




「り＿」




両方の手錠を外した瞬間、理津の体が前のめりに倒れた


自由になった腕は痙攣し
骨がミシミシと解放された歓喜に震えている




「う、で…動かな……ッ」




混乱している理津を起こして、抱きしめる

白かったであろうワイシャツの袖は赤黒く変色し
サイズが合っていないのではないかと思う程体は細い




「理津君、大丈夫だから。落ち着いて」
「う……ぁ」




嗚咽が小さく漏れる
寂雷は服が濡れるのも構わず理津を抱きしめていた

きっと見られたくないだろうから






しばらくして、鼻をすする音を聞き
そっと体を起こした


鼻を赤くして、まだ涙が残る濡れた瞳
なんとか落ち着いたようだ




「出ようか」
「…体、うごかない」




すんと鼻をひくつかせて理津が言う
寂雷が微笑んで理津の腕を首に回させる




「掴まっているんだよ」

「…えッ！！」




童話のお姫様より軽いのではないか
本気でそう思った

理津は暴れる元気もないのか、無言で首筋に擦り寄っている



手首には、跡が残るかもしれない



深い憤りを湛え、その場を離れた
久しぶりの外の空気に、緊張が解けたのか理津がまた涙を流した







「…車で来たんですか」
「昼に出て、だいぶ遅れてしまったよ」
「電車で来ればいいのに」
「帰る時、君を隣に乗せたくてね」



鼻声の理津を助手席に乗せ、車は発進する
寝ていてもいいと言ったのだが、理津はその気配を見せない



車窓から夜明けを待ちながら、昔のことをポツリと話し始めた

中学生で親を失ったこと
引き取り手にいい顔をされなかったこと

辛いだろうに、まるで慣れているみたいに話すから

聞いているこっちが辛くなる




一通り話した後、
理津が恥ずかしそうにごちる




「25も過ぎたオトナが、こんなに泣きじゃくって恥ずかし…」

「そうかな。私には、君の時間は中学2年生で止まっているように思える」




多感な時期に親を失ったことで彼の時計は止まってしまった
愛に、飢えていたんだ



だから彼は笑う
多数の女性と関係を結ぶ

そうすることでしか埋められなかったから





「理津君、私は…君を愛して＿＿って寝てる」





相当疲れているだろう
今は寝かせておこう


起きてからでも遅くはないだろうし
私たちには時間があるからね

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