【ヒプマイ】 35℃、カタルシス。2 【男主】

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泣いて泣いて

涙が枯れて



帰ってきた人物が、予期していない人で

また泣きそうになる





おかしい

夢だろうか

夢にも見ない光景だ





どうしてそこにいる？
どうしてお前がそこにいる？


だって全部捨てたんだ





「どうして…あなたが、ここに…」
「君を救いに」

「俺は、そんなこと頼んでない」
「君が頼まなくとも、私は君を助ける」

「…どうして」
「好きだから」

「俺のためじゃなくても？」
「そうだよ」





なんで
どうしてそこまで
だって…





「…なんでだよ」
「なにがだい」

「だって、俺なんて、助けたら…神宮寺先生が」
「あの程度の脅しで、私が君を諦めるとでも？」

「俺が、選んだんだよ…俺がッ！！望んだんだよ…」
「そうかい」





縋れるものなら縋りたかった

今まで自分が犯してきた罪が
痛くて痛くてたまらなくて

手を伸ばしたってあまりに高い壁ができてしまっていて
どうせもう届かないと諦めていたのに





「…もう、全部捨てたんだよ」
「なら私が拾い集めよう」





貴方はいつもそうやって俺を
俺の壁を壊してやってくる


嫌いだ

嫌いだ


そう思っていたい
そう思っていないと不安だ



嫌いの中に見え隠れするそれを掴まれたくない



完璧でありたい
貴方のようにありたい

感情なんて、いらないんだ
こんな感情なんていらないんだ

お願いだから





「…嫌いって言ってるじゃないですか」
「嘘吐き」

「嘘じゃない」
「ならどうして、こんなに震えているんだい。どうしてそんな顔をするんだい」

「…なに…だって……」
「ねえ、理津君。もう諦めようか」





寂雷が笑う

その手が頬を包む

温かくて優しくて


なんでそんな顔すんだよ
優しくしないでくれよ
そんなことされたら、また


また、あなたに縋りたくなる






「君がどんなに私を嫌いでも、拒んでも、私は君を好きで、絶対誰にも渡さない」






何度でもあなたが傍に寄ろうとするから俺は





「あぁ…しつこいんだよバカ」
「御免ね」

「嫌いだ、嫌い…あぁもう…」
「御免。けれど、もう君を一人で泣かせない。君がそれを拒んでもね」





もう俺は、あなたを拒めない






お願いだから

これ以上、抉らないで

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