52 ページ3
「昔…したんだ、検査。陰性だった」
じゃなかったらこんなに女と関係なんて持たないし
そういう病気に関しては人一倍気を遣っている
だから、なんだ
俺の出生の経歴は変わらない
「それならどうして、汚いなんて、自分を陥れるんだい」
「あんたが俺にどんな目を向けるか気になっただけ」
「ふふ、結果はどうだったのかな」
「…うるさい」
からかうような視線
顔を背ける
細い指が、昨日したみたいに頬を撫でる
「理津君、仕事は」
「ん…ある」
「なら、シャワーを浴びてきなさい。朝食、作っておくから」
「…ありがとうございます」
筋肉が痛むがなんとか踏ん張ってシャワールームへ向かった
_
風呂場からの水音に耳を傾ける
朝食の準備をしながら、先程までのしおらしい彼を思い出す
「ふふ、素直な彼は可愛いなあ」
しかし
あの苦しそうな顔
彼は今までどんな思いで生きてきたのだろう
彼の周囲には、彼に理解を示す人はいなかったのだろうか
だからこそ彼は、多数の女性とふしだらな関係にあるのだろうか
「例えば君が、そういった病気に感染していたとして」
それが何か問題になるのだろうか
「それでも私は君を好きでいるだろう」
むしろ、そっちのほうが_
邪な考えを振り払う
私は何を考えているのだろう
悩み苦しみ、哀れな彼を見ていたいなんて
…けれど、もし
昨夜のことがきっかけで、私と彼がそういった仲になったとして
私はどうしたらよいのだろう
恋人にもなれず
ただ彼を慰めるためだけにいるのだろうか
「……全く」
どうやら私は、いつの間にか欲張りになっていたらしい
こうして彼と同じ空間にいられるだけでも、奇跡のようなものなのに
彼を手に入れたい欲望がどんどん肥大化してゆく
いつかこの手が
彼を我が物にしようと
彼の首を絞めてしまうのではないか
彼にとってのその他大勢でいることに我慢ができない
彼が私の目につかないところにいることが耐えられない
「__あ」
手からするりと食器が落ちる
床に打ち付けられ、真白い皿はアート作品のように美しく割れた
いつかこうやって
彼を見下ろす日が来るのだろうか
バラバラに砕けてしまった
美しいきみを
136人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
無月 - 2024年から失礼します。1年前にヒプノシスマイクにはまり(遅い)、寂雷先生を好きになったので読んでみましたが、2人の心情表現がリアルすぎて本人に話を聞いて書いた実話かと思ってしまうほどでした。画面も顔もびちょびちょです。ありがとうございました。 (1月11日 10時) (レス) @page42 id: 1dba4fa267 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - ぴみゃ@ごりらーさん» ありがとうございます。作中では経過時間を長めに取り、主人公と先生の中の深まりをじっくり書くことができました。僕も二人の距離感、書いていてとてもグッときます。改めて、完結までありがとうございました (2019年5月8日 23時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴみゃ@ごりらー(プロフ) - 遅くなりましたが完結おめでとうございます!主人公くんが、凄い好きで、話も深く大好きな作品で、更新が凄く楽しみでした。先生と主人公くんの会話やお互いへの思いにとても癒されました (2019年5月7日 19時) (レス) id: a355684bde (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 鉄壁炭酸カルシウムさん» 主人公は元々こんなツンデレ属性ではなかったのですがどういうわけかこんな猫系に…。わあ、嬉しいコメントありがとうございます。機会がありましたら今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました (2019年4月28日 22時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 迷い犬さん» 返信遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。二人がお付き合いした後のお話でしたがなんだかんだ書いていて一番楽しかったです。最後までありがとうございました (2019年4月28日 22時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Last | 作成日時:2019年3月31日 0時