【ヒプマイ】 35℃、カタルシス。2 【男主】

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理津の携帯電話の着信履歴を理津に見せる

といっても理津は床に伏せたままだが



「まぁたアイツから着信来てるよ、理津」



今までいくら乱数が話しかけても無反応だった頭が、ピクリと動く
それだけで苛立つ



「愛されてるねっ」

「……あ」



寂びれた声が漏れる
乱数は強制的に理津の頭を起こす

虚ろな碧眼



「ねぇねぇ、どうして理津は寂雷に拘るのかなっ？」

「……」



乱数には答えがわかっている
理津はただ目を細めるだけ



「ねえ理津ってばー」

「……」



言いたくないのか、顔を背ける
乱数は舌打ち一つ


じゃあ、教えてあげるよ





「理津は、寂雷に憧れてるんだよねっ？」

「ち…がうッ…」





理津の身体を押せば、あっさりと後ろへ倒れる

座るような形になった理津の足を割って、顔を包み込むと
怯えたように肩を竦めた





「寂雷は理津の欲しいものぜーんぶ持ってるもんね？」

「違う…」





苦しそうに顔を歪め、体を震わす
その姿が溜まらない





「みんなから頼られて、感謝されて、みんなに見てもらえる」

「やめろ…」

「そのくせ人に向ける顔は能面みたいに無感動、無感情、何者にも無関心でカンペキ」

「やめろって…」

「理津には一つもないもんね？」

「乱数」




「でも、無理だよ」






現実を突きつけるように
乱数が笑う





「理津、ほんとはわかってるんでしょ？理津はあのジジイみたいには為れないよ」

「…ッ」

「頑張ろうとしてる時点で無駄なんだよ」





理津の口からか細い声が漏れる
荒い呼吸




「理津はずっと僕の友達でいればいーじゃん」




うな垂れる理津を優しく抱きしめる
背中をさすりながら甘言を吐く




「そしたら理津の本当に欲しいもの、いくらでもあげる」




吐きそうなくらい重い言葉
理津が大好きな言葉だ



僕がいるよ
大丈夫
僕だけ



その言葉で何度理津の心が折られたことか
何度乱数の欲を満たしたことか



しかし理津は、首を横に振った





「…俺、は」





その態度に、乱数は冷めたように手を離す
ぽふぽふと服についた砂を払って立ち上がる





「つまんないの」





やっぱりアイツのせいだ

いつもの理津なら、
飽きられるのを怖がって謝ってくるのに



僕の方が理津のことをよっぽどわかってるのに
僕の方が理津と一緒に居るのに



どうしてアイツなんだよ



ねえ、理津







部屋を灯す明かりが消えた

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