【ヒプマイ】 35℃、カタルシス。2 【男主】

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そこがどこなのか、理津には皆目見当がつかなかった



時折隙間風に乗ってカビ臭さが鼻腔に流れ込んでくる


木造住宅
剥き出しの柱


それ以外に目立つものといえば
両手首の錠くらいか

後ろ手の拘束

のびる鎖が杭で打ち付けられている

身じろぎするたびにガチャガチャと
うるさい金属音




時計はない

時間が経てばそのうち
じわじわと光が差し込んでくる




最初の内は
部屋の扉が露わになるたびそこへ向かって身を乗り出していたが

手首が手錠に食い込みジュクジュクと赤い液を垂らし始めたためやめた



この性別のおかげで割座ができず
どうしても腰が浮き

前のめりになって額をコンクリートの床に打ち付ける



同じ体制をずっととり続けていたためか
少しでも動くたびに硬直した筋肉がギイと音を立て

激痛をもたらす



横になるのが一番楽だと気づいたが
ずっと続けていると肩が押しつぶされ

何度も寝返りを打つ
そのたびに頭を打つ





「……」





唇が切れる

思考が鈍る

腹が減る





夜が来る





すると



キイ、と



甲高い音を立て、扉が開く
木扉が軋む




そしてやっと明かりが点く




外に明かりが漏れないよう布切れを張り
奴が意気揚々と近づく






「やっほー理津っ！待たせちゃってごめんねえ」






最初の何日かは何かしら反応をしていた気もするが
極限状態となった今そんな余裕はない




「じゃあ外すね」




そう言って乱数は理津の手錠をカチャリと弄る


理津が自由になるのは一日の内
多くて2回

用を足す時だけ
そして乱数が来た時だけである




逃げようと思っても

乱数のヒプノシスマイクからは逃げられない


そもそも逃げようなんて気を起こせば
仕置きが待っている





用を足し、手錠が再度施され

また額を床に打ち付ける




何度目の夜だろうか




食事は用意されている

ずさんに投げ出されたコンビニのおにぎりやら
サンドイッチやら

しかし理津は口をつけない



犬のように無様に地べたに這いつくばり

口を上手に使って栄養を補給するなんて

普通に考えて恥辱であり、抵抗を持たない者はいないだろう


しかし今にも死にそうな空腹の状況になれば
人間、嫌でも生きるために行動するものだ




乱数は呆れたようにおにぎりのラッピングを外し、

ちょこんと理津の目の前に置く


そして理津の頭を優しく撫でる






「ねえ理津、いい加減食べないと、本当に死んじゃうよ？」




「理津、ねえ」




「無視すんなよ」

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