【ヒプマイ】 35℃、カタルシス。2 【男主】

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「リツくんなら先日退職しましたけど…」

「え」



仕事終わりに理津の勤めている書店へ寄った
否、勤めていた

気まずそうに話す相手の反応からして、同じく動揺しているのだろう



「転勤、ではなく？」

「ええ。突然、辞めますって」



あれはやはり嘘だったのか

なら、彼は一体今何をしているのだろう




「これからどうするとか、なにか聞いていませんか」
「何も。うちだって困っているんですよ。売り上げも、恥ずかしながら彼がいてこそって感じでしたし」




どうやら話したがりの人のようだ
今は長話という気分ではないのだが




「こちらも急に言われても困ると言ったのですが、どうしてもって聞いてもらえなくて」
「そうですか。すみません、変なことを聞いてしまって。それでは失礼します」




まだ話たりないという表情だが
こちらの顔を見て、しつこくはしてこなかった





これで、彼の手がかりが無くなってしまった

思えば彼についての情報なんて連絡先と職場くらいなものだ
カルテを見れば一発だろうが、あまりに公私混同しすぎている

…いや、そんなことを言っている場合でもないのだが




『理津のことなーんにも知らないくせに』




正論に歯噛みする

理津は乱数と共にいるのだろうか


そう考えただけで嫉妬で狂いそうだ


どうして飴村君と？
もう帰ってこないのか？
本当にあれが最後なのか？
どうしてあの時追わなかった？

やはりあの日彼を部屋から出さなければ
一歩たりとも外に出さなければ


そんな非人道的なことさえ考えてしまう



つのる後悔

もう何もかも手遅れ

自分ひとりの気持ちばかり先行する



恋愛ではよくあることだろうが
それでも慣れるなんてことはなく
いつだって同じ痛みだ


煩わしいことこの上ない

しかし諦めることも出来なくて

苦しんで苦しんで

結局時間がなんとかしてくれる





そんなこと耐えられるわけがない





いつも笑顔で周囲の人々を癒す
笑顔しか存在しないような君の裏


本当はとても表情豊かで

可愛くて




好きで




私のオフィーリア

君と一緒に居ると自分も君のようになれたと錯覚できる
君のことに必死になれる




誰にも渡さない




君が満たされるなら
何度でも君を抱く



君が他の誰かのものになるなんて許せない
私には君しかいない
君だけが私に心を教えてくれる
本物の笑顔にしてくれる
悲しみや怒りを感じさせてくれる
尊いと思える


だから







君がために総てを投げうってでも＿

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