【ヒプマイ】 35℃、カタルシス。2 【男主】

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「だから私にこういうのは……」




腕を引かれ

座らせられ

何をされているのかといえば



…また髪を弄られていた



慣れた手つき

彼のする手櫛は一種の心地よさまで覚える

寂雷が身じろぎすると理津が叱る





「いいから動かないでくださいよ。これが、最後ですから」


「…最後？」





その言い方に怪訝な顔をする

理津は器用に指を動かしながら口を開く






「俺、この街出ます。だからもう、会えない」






心臓が急激に痛む

息苦しい




どうして急に、そんな

だって今までそんな素振り




混乱する頭を抑えつけようと、口を開く




「急だね。転勤とか、かな？」

「…そう、ですね」




振り向きたい
顔を見たい

動揺は隠しきれず、口調がきつくなってしまう






「君は私のことが嫌いと言う癖に、律義に報告するんだね、どうしてかな」






彼の指が止まる

背を向けていても息を呑む音が聞こえた





「……っはは、貴方の苦しむ顔が見たかったからですよ」





その口調で自ずと理解した



ああ、君だって動揺しているんだね

声が震えている

苦しむ顔が…なんて言って



振り返っていた

彼の手から髪がするりと流れる






「じゃあ、どうしてそんな、泣きそうな顔をするんだい」






今にも泣きそうな目






「……そんな風に見えます？」

「うん」

「自惚れも大概にしてください。なんで俺が？ただの親切ですよ」






君はいつまでそうやって強がっているつもりなんだ

君はさっき、もう会えないと言った






「会わない、ではなく、会えないと言ったね」

「…」

「嫌いな人間にもそんな風に言えるなんて大したものだよ」






厳しい眼差しを向けた

しかし理津は意に介さず寂雷に背を向かせる



「…だから、動くなって言ってんだろ」



また静かに指が動く

髪に触れる僅かな体温を寂雷は噛みしめていた




本当にどうしたらいいのかわからない

彼はどうしてほしいんだろう

これが、最後






「はい終わり」






ゆっくり振り返れば、彼はまた初めて会った時の笑顔


本当に、これで終わり？






「じゃあね、先生」






彼が会議室を出ていく

追わなくてはいけないのに

その呆気なさに





ああ

どうしてこうなったんだろうか





しばらくして、ようやく彼を追う

無論、姿は無く





外まで出てみたが、いない

情けない





そして、気づく

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いま一番

否





今でなくても見たくない面

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