9: 彼の世界 ページ10
3人の人物が自分を囲んでいる。
まるで断頭台に座っているかのように首を垂れる。
「ああ、よりにもよって男の子なんて。」
「だから俺は嫌だったんだ。手がかかるだけだし。」
両脇の男女が同時に発した言葉。しかし彼の耳にはどちらの言葉もはっきりと聞こえた。
「ねえ」
正面から甲高く幼い声。首をもたげる。
満面の笑みはまるで天使のようで、彼の中で最も美しいとされているもの。
桃色の唇から紡がれる言葉は彼の中では神命の如く
__残酷で、無慈悲である。
「どうして産まれてきたの?」
叫ぼうにも声は出ない。
罰だ。
罰だ。
ごめんなさい。ごめんなさい。
口を動かして、必死に懺悔の言葉を叫ぼうとする。声は出ない。
目の前の少女は楽しそうに笑いながら、なおも彼を追い詰める。
「じゃあ、あなたがやらなきゃいけないこと、わかるよね?」
応えられない。声が出ないから。
しかし彼の中で答えは出ている。
少女は笑う。見透かすように、嘲笑するように。
「___それが、お前の存在意義だ。」
瞼を開けても闇。
暗い、が、寒くはない。
……。
額の汗を拭う。
目を凝らしてみれば、そこは路地ではなかった。
自分の体を支えているのは柔らかいベッド。上を見れば天井もあるし、周囲は壁。簡素な部屋。
「……。」
見回すと、奥に下から光が漏れている箇所がある。
まだ不安定な視界の中、重い体を引きずり、そこへ向かう。
触れてみると、横長で丁度手に収まるサイズの突起がある。どうやら扉らしかった。奥には恐らく部屋。光の発生源も奥に続く部屋のものであろう。
ノブを引き下げ、扉を押し開ける。
最初に目に映ったのは二人掛けくらいのソファ。そして小さなテーブル。そして背を向けて座るその人には見覚えがある。
「……。」
どうしたらいいのかわからず、しばらく突っ立っていたが、背を向けていたその人が急に立ち上がったことでびくりと肩を揺らし、後ろの扉に肩をぶつけた。
ドンという鈍い木の音は非常に小さいものだったが、静まり返っていた室内には十分響き渡ったらしく、立ち上がったその人が長い髪を揺らして振り向く。
目が合った。
「目が覚めたようだね。よかった、体調はどうだい?」
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Last(プロフ) - カナリアさん» ありがとうございます。僕自身も今作の主人公はお気に入りです。これからも堪能していただければと思います。 (2018年12月28日 12時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 主人公くんが可哀想で可愛くて個人的にダイレクトでした…… (2018年12月27日 22時) (レス) id: 90bd7d6cd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Last | 作成日時:2018年11月24日 20時