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光のない瞳。
 しかし、まるで琥珀のような美しさに、見入ってしまうと同時にまるで飲み込まれてしまうような虚空が横たわっていた。


 彼が妖艶な唇を寄せる__



「止めるんだ。」



 彼の口元を押さえ、制止する。
 怪訝な表情で理解した。自分は今、そういう風に見られているのだ。

「私は別に、君とそういうことをしたいわけじゃないよ。」

 誤解を解こうと口を開くが、今までそういった環境で生活してきた彼にはうまく伝わらないらしく、小さく首をかしげる。

「…?」

 彼の額に手を添える。異常な程の熱さ。

「…熱があるね。」

 無表情でそこにはなんの感情も含まれていない。他の要因はあれど、熱のせいもあるのだろう。

「君、家は?」

 保護者がいれば問題はほぼ解決するのだろうが、そう簡単にはいかない。言葉をじっくり吟味して彼はゆっくりと首を横に振った。

さて、どうしたものか。
警察に頼れば早そうだけど、彼はそれを望むだろうか。
熱もあるだろうし、今こうしている間にも濡れた衣服が体温を奪っているだろう。

 脱いでもらえば手っ取り早いがそれでまた誤解されると面倒だ、と寂雷は顎に手を添える。


背に腹は代えられない、か。


 相変わらずの無表情で、硬直しきった表情筋を解すように頬に触れる。

「とりあえず、うちにおいで。そのままでは悪化してしまうだろうから。」

 すると、今まで無表情だった彼の口元がピクリと動いた。

 何かを伝えようとしている。

 そう察した寂雷は急かすことなくじっと言葉を待った。
 短くない間の後、とても小さく、それこそ虫のようなか細い声が耳に届く。


「…おれ、お金…はらえ、ない…。」


 少し震えた声。今にも泣きそうな声。
 今までどうして、どうやって生きてきたのだろう。こんなに小さな背中で、どんなに大きなものを背負ってきたのだろう。


「構わないよ。放っておくわけにはいかないからね。」


興味が湧いた。


「私の名前は、神宮寺寂雷。君は?」


 しばらくして、また小さな声が鼓膜を揺らす。



「……ユキ。」



その時既に、私は彼に魅入られていたのかもしれない。

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Last(プロフ) - カナリアさん» ありがとうございます。僕自身も今作の主人公はお気に入りです。これからも堪能していただければと思います。 (2018年12月28日 12時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 主人公くんが可哀想で可愛くて個人的にダイレクトでした…… (2018年12月27日 22時) (レス) id: 90bd7d6cd5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Last | 作成日時:2018年11月24日 20時

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