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「雪切君。そのままでいいから、聞いてほしい。」
落ち着いた声音に雪切は鼓動が加速するのをはっきりと感じる。声の方向からして隣にいることは明らかだ_目を閉じている雪切には寂雷が正座しているのか足を崩しているのか判別できないが。
「君を私の庇護下に置きたいと思っている。」
教養の乏しい雪切には寂雷が何を言っているのか大半理解できなかった。しかし、自分をここに置こうとしていることだけは辛うじて理解できた。
目を覆われていてよかった。
もし顔を合わせていたら、どんな表情をしたらいいかわからなかっただろう。
「急にこんなことを言ってすまない。けれども、すべては君次第だ。君が嫌というのであれば、私は止めない。」
妙な、息を呑む音が聞こえた。誰のものかわからない。もしくは両者のものだったかもしれない。
雪切は瞼を閉じた闇に、呑みこまれるのではないかという不安を抱く。
そうだ
あの時
あの言葉
「君が、遠くないうちに、まだそう思ってくれるなら。」
こういう意味だったんだ。
__ずるい。
この人は、こうなることも全部わかってたんだ。俺から、家族を奪うこともわかってたんだ。
だったら、俺がなんて答えるかも、わかっているんだろうか。
目を覆われていたことを後悔する。
寂雷の顔を見たい。あの策士は、一体どんな顔をしているのだろうか。
やるせない気持ちで満たされる。
一人で外に出たところで当てもなく、やることもない。野垂死ぬことくらい雪切にも簡単に見当がついた。選択肢は無いに等しい。ただの利益なら、納得できたのだろうか。
俺は、まだ……あの日の言葉に縋っている。
只、嫌悪感。寂雷が何を考えているのかわからなかった。
こんな自分にそこまでする理由も。何を思って庇護下なんてことを考えたのだろう。自分はなぜ、そんな得体の知れない相手に期待しているのだろう。
パズルのピースがどんどん細かくなる。もはや角を探すことすら億劫でならない。
それに、相手にそのことを伝えてやることも癪に障った。
「…雪切君。」
どういう感情を込めているのか。到底理解できない。
雪切の唇が痙攣するように動く。初めて出会った時を彷彿とさせた。
あの雨の日のように、寂雷は雪切の頬を撫でた。
あの日と違うのは、雨が降っていないことと、
その手つきが不安げなことくらいか。
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Last(プロフ) - カナリアさん» ありがとうございます。僕自身も今作の主人公はお気に入りです。これからも堪能していただければと思います。 (2018年12月28日 12時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 主人公くんが可哀想で可愛くて個人的にダイレクトでした…… (2018年12月27日 22時) (レス) id: 90bd7d6cd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Last | 作成日時:2018年11月24日 20時