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36: 雪切の世界 ページ37

見開いた山吹色の瞳は、ただ、美しく。
 琥珀のような輝きを宿す。



なんだっていうんだ。

なんだって…。



 理解できない言葉ばかりだ。それなのに、どうしてか彼の_ _ _の崩潰した心にストンと落ちた。

 喜びではない。
 怒りでもない。
 理解できない。

 なのに、こんなにも___。


この人に会ってから、意味不明なことばかり。


 寂雷は、さらに口を開く。
 _ _は怯えたように肩を震わせる。


怖い。


 次の言葉が怖い。なにかを感じるのが怖い。心の中に、もう何も入れたくない。
 逃れようとしても、体がうまく動かない。
 目を逸らせない。




「君の___」




お、れは__


 知りたくない。聞きたくない。
 _ _は口を動かそうとする。ただ、「嫌だ。」と。無駄な足掻き。


 大切な人を奪われた。

 存在意義も失った。

 もう何も残っていない。


 これ以上、奪わないでほしい。




 優しい手が_ _の手をにぎる。


 何度、この手から逃れたいと思ったことか。

 何度__離れたくないと願ったことか。




「警察の方から君の名前を聞いたよ。」









「汪海雪切くん_だよね?」









 胸にストンと落ちたのは。


 久しく忘れていた、自分の名前だった。




「__あ……。」




 間の抜けた声。

 しかし、「自分」の声だった。


 汪海雪切という名前が、長い時間をかけて、やっと自らの身体に帰ってきた。


 ぽろぽろと、宝石のように





 __雪切の目から涙がこぼれた。





「あ、ぁ……」




 もうわからなくなっていた。

 名前も、自分がなんなのかも。

 家族のためならそんなものどうだってよかったから。


 求めても、求めても、見つからない答え。



やっと、みつけた。

おれの、なまえ__。



 只、引き寄せられるが儘に。雪切は寂雷の首筋に額を押し当てる。
 迷子の子供のように泣き声を上げて泣いた。
 寂雷はただ、優しく頭をなでる。

 それは、雪切が泣き疲れて眠るまで続いた。



 夜が二人を静かに包んだ。

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Last(プロフ) - カナリアさん» ありがとうございます。僕自身も今作の主人公はお気に入りです。これからも堪能していただければと思います。 (2018年12月28日 12時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 主人公くんが可哀想で可愛くて個人的にダイレクトでした…… (2018年12月27日 22時) (レス) id: 90bd7d6cd5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Last | 作成日時:2018年11月24日 20時

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