3 ページ4
傘を向けられ、一瞬戸惑う。
汚れるのも構わず長い髪を地面に垂らしひざを折る相手を一瞬女かと思ったが、その耳あたりの良い声から男だと判断した。
表の光で照らされる顔。長い睫毛。
暗闇に身を置きすぎて死んでしまった感性でもわかる。
綺麗だ。
その容姿にしばらく見惚れてしまったが、その細く白い首が傾く姿にハッとして口を開く。
「口で1回2万、ナカなら追加で1万。ホテルなら料金はそっち持ち。」
この街で転がっている人間に声をかけるのは、つまり＿そういうことだろう。こんな美人は初めてだが。
神妙な顔で口を閉ざしている相手。
雨の中外は辛いだろう。もしかしたら、久しぶりに柔らかいベットで寝られるかもしれない。
＿寝る間もないくらいの苦痛が待っているかもしれないが。
相手は憂いを帯びた表情で長い指でそっと彼の頬を撫でる。優しい手つき。
「おいで。」
またあの良い声が薄い唇から漏れる。
促されるままに重い体を起こし、背中を追いかける。
やっぱり妙だ。体が、重い。
足取り重く、しかし必死についていく。
妙なことに、相手はホテル街とは逆の方向に歩いて行く。彼は結局外か、と頭の隅で考えながらよたよたと歩く。
「さ、乗って。」
開かれた入口、それはホテルではなく、車。納得した。
強くなる雨。車の中に雨が入るのを捉えつつのそりと後部座席に乗り込む。
今まで車や家の中ということがないわけではなかったが、車を所持しているということは相当の富裕層だ。滅多にお目にかかれないだろう。
少しイロを付けてもらえるかもしれないと考えたが、次の行動で彼は首をひねった。
一緒に後部座席に乗り込んだ、まではいいとして。どういうわけか相手はしっかりとした黒い鞄から謎の道具＿というか、聴診器を取り出し、耳にかけた。
「少し、失礼するね。」
そういうと、彼のびしょびしょに濡れた服をめくりあげた。
そういうプレイなのか？と首を傾げたが、その姿があまりにも様になっていて、どんどん訳が分からなくなる。
しばらくぺたぺたと冷たい感触が体に触れたが、やがて聴診器を耳から外す。一体何だったのか。まあ、医者となれば車を所持していることも納得できるが。
慈悲？
薄暗いものが胸の奥から沸き上がるのを感じたがそれを黙殺し、彼は確かめるように相手を押し倒した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 128人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Last(プロフ) - カナリアさん» ありがとうございます。僕自身も今作の主人公はお気に入りです。これからも堪能していただければと思います。 (2018年12月28日 12時) (
レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 主人公くんが可哀想で可愛くて個人的にダイレクトでした…… (2018年12月27日 22時) (レス) id: 90bd7d6cd5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Last | 作成日時：2018年11月24日 20時
