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ぐったりと路地裏に寝転ぶ姿はホームレスと思われそうだが、その容姿から家出少年といった方がしっくりくる。しかし、実際は前者の方が正しい。
重い。
どうにもこうにも体が重い。
上瞼と下瞼を近づけ、ぼうっとする頭で考える。
変な物でも食べただろうか…。最近気温が下がっているせいもあるのかもしれない。
あくまで無表情に自分の状態を分析するが、なんであろうと関係ないか、と最終的に考えるのを止めた。
日数を数えて30日目。明後日は集金の日だが今の状態ではとても足りない。体調が悪いなんて言っていられないのだ。
戦争によって人口が激減。貧富の差が広がり、男子には過大な税金が掛けられる時代になった。
今の時代、男子が生まれることはとても喜ばれることではない。年の離れた妹が可愛がられるのは必然のことだった。
幼い頃から愛情を向けられる姿は見ても、それが自分に向くことはなかった。
男は手がかかる。しかし、生まれてしまった者は仕方がない。両親の選択を恨んでなんていない。
恨む心すら忘れてしまった。
女である妹を学校に行かせることでも金がかかる。家の稼ぎではとても足りない。
切り捨てられることは仕方がない。妹の未来のためなら。
しかし、大した教養もない少年の働き口は無く、明日の食事さえままならない。辛うじて自分にあったのはこの容姿だけ。そして彼は___。
眠い。
瞼を閉じれば闇。
まだ夜は深まる。これからが稼ぎ時だというのに何事か。
春といっても夜になると冷え込む。薄手のTシャツ一枚にジーンズ姿の彼には辛い。体をできる限り抱き寄せてうつらうつらとしていると__
ポツリ
ポツリ
頬に冷たい雫を感じる。
それは次第に多くなり地面を濡らしていく。雨だ。
嫌でも目が覚める。体温が下がる。ガチガチと歯がぶつかる音。貯めた金が濡れないように汚いビニール袋に入れて体の下に挟んだ。
ああ、寒い。
いつまでそうしていただろうか。
冷たくなる体にまた、うつらうつらと視界が霞む。ただの睡魔ではない。目を閉ざせばきっと、もう…。
これで楽になるとか、なんてひどい人生だ。とか、特に考えることもなく、彼はゆっくりと目を閉ざ_そうとした。
そうすることができなかったのは
恐らく自分を求めているであろう客が、嫌でも彼の意識を覚醒させたからだ。
「こんなところでなにをしているんだい。」
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Last(プロフ) - カナリアさん» ありがとうございます。僕自身も今作の主人公はお気に入りです。これからも堪能していただければと思います。 (2018年12月28日 12時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 主人公くんが可哀想で可愛くて個人的にダイレクトでした…… (2018年12月27日 22時) (レス) id: 90bd7d6cd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Last | 作成日時:2018年11月24日 20時