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ベッドの中で身じろぎもせず壁を向く雪を見つめていた。
嫌われてしまったかな。
仕方のないこととはいえ、どこかで傷ついている自分に不思議な気持ちになる。
寂雷は何か声をかけようかと迷った末、結局何も言えず静かに部屋を出た。
開きっぱなしのパソコン。横に置いてある空のマグカップには先程までコーヒーが入っていた。
時計の短針は深夜12時を指し、長針はほぼ真逆の30分を過ぎたあたりにいる。雪は寂雷がベッドに寝かせて1時間も経たないうちに起きてきた。
まだ若干コーヒーの香りがするマグカップの持ち手をなぞる。
「私は彼を、どうしたいのだろうね…。」
答えは返っては来ず、部屋には再度静寂が訪れる。
出会って一日も経っていない相手だ。彼の身を真に案じているのであれば、病院へ_さらに言うなら警察へ_預ければよかったではないか。まさか下心があったのかと問われれば、断じて違う。しかしその程度の考えも思いつかなかったのかと問われれば、それも否。
常識的な判断を否定し、自分の感情に任せて彼を振り回しているに過ぎないのではないのか?
結局のところ、寂雷自身も自分の行動に理解できない点が多すぎる。
寂雷は美しい顔を歪め、小さくため息をつく。その場に異性でもいたら確実に惚れていたであろう、物憂げで寂寞とした表情で、だ。
…いい加減にしよう。明日も早いというのに。
煮え切らない感情に蓋をして、無造作にソファに横になる。普段の彼であればあり得ないような雑さだが、どうにも今から布団を準備する気にはなれなかった。
深く目を閉じる。
浮かぶのは、宝石のような瞳。
こんな言葉を使うのは低俗かもしれないけれど…。
彼のような壊れかけた人間を今迄何人も見てきた。
触れればその瞬間、ばらばらに砕けてしまいそうなアンバランスな人間を。
しかし、彼は少し異質だ。
壊れてしまいそうなのに、亀裂がない。
きっと生まれた瞬間からそういうものだったのだろう。きっと、そういう風に扱われてきたのだろう…あくまで推測の域を出ないけれど。
彼はなぜ今の今まで壊れずにその美しさを保っていられるのだろうか。
その理由に
とても
興味が湧く____……。
部屋には小さな寝息だけが響いている。
次の日寂雷は珍しく寝坊しそうになるのだが、それはまた別の話。
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Last(プロフ) - カナリアさん» ありがとうございます。僕自身も今作の主人公はお気に入りです。これからも堪能していただければと思います。 (2018年12月28日 12時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - 主人公くんが可哀想で可愛くて個人的にダイレクトでした…… (2018年12月27日 22時) (レス) id: 90bd7d6cd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Last | 作成日時:2018年11月24日 20時