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彼とは連絡先こそ交換すれど、特になんの会話もしていない

私と彼はいつも行き当たりばったりで、約束をしたことなど一度もなかった




「はぁ…」




今頃彼は仕事をしているだろうか
それとも、他の女性と…


考えただけで陰鬱になる

だが胸の奥を這いずり回る感情に蓋をできない




彼に会いたい




どうして今に限ってそんなことを強烈に思うのかといえば、ディビジョンラップバトル_韻踏闘技大会が近いことにある

暫く新宿を離れる
勝てば、この街の更なる飛躍に繋がる

自信をつけたい、という意味でも、自分に対する戒めという意味でも
彼に何か言ってほしい


大きな勝負事の前に好きな人に逢いたいと考えるのは自然なことだろう







「神宮寺先生、なんだか浮かない顔ですね」



心中が顔に出ていたのか、傍にいた看護師に声を掛けられる

寂雷は胸の内を話すわけにもいかず、笑って誤魔化す




「ええ、ちょっと…」

「そういえばもうすぐ始まりますね、韻踏闘技大会。看護師一同応援してます!」

「はは、ありがとうございます」




彼も、そんな言葉をかけてくれたらなあ

なんて妄想するが、恐らく無い

せいぜい気色悪いと笑い飛ばされるくらいだろう





「気になる人と会話をしたい時は、どうすれば自然にできるのでしょう」

「え?」

「あ、いや…」





最近心の声がだだ洩れになっていることが多いかもしれない…

故意ではないにしても、これはセクハラにならないだろうか…?


看護師は暫く怪訝な顔をした後、なんでもないように答えた




「うーん、とりあえず電話をしてみてはどうでしょう。待っていても相手は気づいてはくれませんから」

「…そうですよね」

「ふふ、神宮寺先生もそういったことで悩むんですね」




そんなに意外なのだろうか

寂雷は少しばかり首を傾げつつ、気恥ずかしそうに笑った






その夜、寂雷は意を決して発信ボタンを押した

重い心中とは裏腹に、軽いタップで相手への通信が始まる



出てくれるだろうか

出たとして、第一声になにを言えばよいのだろう



緊張が高まる

決意したはいいものの実はノープランだった



手にじっとりと汗をかく

6コール目

ガチャ、という音



電話口

呆れたような溜息



出た

出てくれた



それだけで嘆息が出そうになる




「要件は」




ぶっきらぼうな声

何を話せばいいのかわからない


いや






「要件は、特にないんだ」

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Last(プロフ) - 狐猫音。さん» ありがとうございます。そう言っていただけると書いていてよかったと思えて感慨深いです。そろそろ続編に突入いたしますが引き続き楽しんでいただけるよう努力していきたいと思います。 (2019年3月29日 23時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
狐猫音。(プロフ) - 乱数くんが主人公の裏表をうまく表現してるみたいで好きです(笑)寂雷先生と主人公、なかなか際どくてそれもまた好きです!これからも更新頑張ってください。応援してます。 (2019年3月29日 9時) (レス) id: 1402817ddd (このIDを非表示/違反報告)
apipe - これからどうなるのかなo(^o^)o ワクワク (2019年3月4日 22時) (レス) id: 6a53dc23ed (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - apipeさん» ありがとうございます。ゆっくり更新になると思いますが楽しんでいただけるよう頑張ります。 (2019年3月1日 23時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
apipe - 寂雷先生好きなので嬉しいです。続き楽しみにしてます! (2019年3月1日 16時) (レス) id: 6a53dc23ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Last | 作成日時:2019年3月1日 1時

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