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ストンと落ちた理津の身体を咄嗟に支える
頬に擦れる髪
_え、いい匂いする
鼻腔をくすぐる爽やかだがツンとしない柔らかい香りに思わず心臓が高鳴る
「あー…びっくりした。助かったよ。で、いつまで抱きしめてるのかな」
「へっ、あ…すみません!!」
体格差から理津の体はすっぽり収納され、半ば抱きしめているようにも見えるだろう
「まぁ俺の体やらかいもんね。抱きしめていたくなる気持ちもわからんでもないけど」
顔が熱い
理津さんはいつもそうやって俺を弄る
「…理津さん、いい匂いするから、つい」
「そうかな。自分じゃわからないや。仕事中は香水とかつけてないんだけど」
なにかしら言い返してやろうかと考えた結果だが大して気にもされていない
「はい、コレで合ってる?」
「はい…合ってます…」
「じゃあついでに会計しようか?」
「お願いします…」
笑いながら首をかしげる理津をいつか照れさせてやろうと固く誓って何度目だろうか
「あ、そうだ一郎君」
「はい?」
「俺これから昼食なんだけど、一緒に行かない?仕事あるから、遠くには行けないけど」
「ぜひ!!」
パッと明るくなる表情に理津が笑う
犬みたいだなぁ
「理津さん、その…朝は急に電話してすんませんでした」
「いいよ別に」
「でも取り込んでたんじゃ」
「そーだね。色々と」
一郎はその色々について言及しないが、俯いて頬を染める
面白そうに笑っている理津を見るに、からかわれていることは自明であるが何も言えない
「そうだ一郎君」
「な、なんすか?」
唐突に理津が意味深な笑みで思い出したように言う
何種類か用意されている理津の笑顔
逆に言えば、一郎の知る理津には笑顔しか存在しない
しかしそれは不自然ではない
「神宮寺寂雷ってさ、どんな人」
「え?」
だからこそ、その笑顔に違和感を覚えた
初めて見る類の笑み
探るようでもあり
事を友好的に進めるための社交辞令でもあった
今まで理津に対して抱いていた憧憬と好意に
その時、初めて疑惑と興味が混ざった
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Last(プロフ) - 狐猫音。さん» ありがとうございます。そう言っていただけると書いていてよかったと思えて感慨深いです。そろそろ続編に突入いたしますが引き続き楽しんでいただけるよう努力していきたいと思います。 (2019年3月29日 23時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
狐猫音。(プロフ) - 乱数くんが主人公の裏表をうまく表現してるみたいで好きです(笑)寂雷先生と主人公、なかなか際どくてそれもまた好きです!これからも更新頑張ってください。応援してます。 (2019年3月29日 9時) (レス) id: 1402817ddd (このIDを非表示/違反報告)
apipe - これからどうなるのかなo(^o^)o ワクワク (2019年3月4日 22時) (レス) id: 6a53dc23ed (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - apipeさん» ありがとうございます。ゆっくり更新になると思いますが楽しんでいただけるよう頑張ります。 (2019年3月1日 23時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
apipe - 寂雷先生好きなので嬉しいです。続き楽しみにしてます! (2019年3月1日 16時) (レス) id: 6a53dc23ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Last | 作成日時:2019年3月1日 1時