【ヒプマイ】 35℃、カタルシス。 【男主】

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寝ぼけ眼の理津に肩を貸し、靴を脱がせ寝室のベッドに寝かせる

いつもは自分が寝ている場所に想い人が寝ているというのはなかなか扇情的な光景だ


そのうえ
この色っぽさ


モンブラン色の髪がうねるように枕に投げ出され

赤みがかった頬

桃色の唇から吐き出される吐息



「…君って人は」

「んん…？」



思わずぽつりと口から零れた言葉に、理津が反応する
相変わらず瞼は閉ざされたままだが


「あぁ、ごめんね。寝ていていいよ」
「…ん」


優しく髪を手で梳くと
理津は安心したように再度眠りについた



どうしたものかと頭を悩ませた結果、連れてきてしまったわけであるが

寂雷は理津の住所を知らない
恐らく、前に彼が入院した時のカルテを見れば記載してあるのだろうが
時間も時間のためであった

不可抗力である

しかし、まぁ…下心が無いと言えば嘘になるけれど





「はぁ…」


リビングで一人
ため息


今日一日で大分彼を知ることができた

しかし彼に想いは届かなかった

けれど完全に拒絶しているわけではないようだ


…彼にはたくさんの女性がいて

多くの人から愛を貰い

彼はその全てに平等に返しているのだろう



「恋多き男、か」



あの時、私は

彼を軽蔑するために聞き返したのではない


私が一途で真っ直ぐな男だって？


違う

そういう事を言いたいんじゃない
私は君と比べたいわけじゃない


私が言いたのは


私にすれば満足するまで愛してやれるのに
私は君しか見ない、見えない

そんなことを言いたかった





けれど、言えなかった





自分でも理解を逸しているのだけれど

息が苦しくなる

喉の奥まで空気が詰まっているみたいに言葉が出なくなる




一目惚れだと

好きだと言った時はこんなに苦しくなんてなかったのに




むしろ息を吐くみたいに自然に出てきたのに




あの時の自虐的な笑顔

あの表情が私の心臓を加速させた
恐ろしい速さで血液が全身を巡った




あの時の君の顔に

私はまた恋をした


何度も何度も

君に恋をした




そのたびに全身がガチガチに凍り付いて動かなくなる

手の中に収めたい感情と
ずっと眺めていたい感情が
ぐちゃぐちゃに合わさって吐きそうだ




ああ私は何度

君を想って


何度

君に恋をすればいい




どうしたら伝わる



どうしたら

君は私のものに



君にはたくさんの選択肢があって

たくさんの女性がいる



けれど



私には君しかいない








君しか

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