【入間銃兎】運命だけど、恋じゃない。【男主】

運命は途切れ、 ページ41

抑制剤が切れたら、この手も離してしまうんだろうか
と、考えてしまったなんて絶対言いたくない

薄々気付いていた気持ちを、違う違うと否定して蓋をした
わからないとうそぶいて


結果的に墓穴を掘った


前までそんなんじゃなかった
顔を見てそわそわなんてしなかった

今の、一瞬で？
多分違う

ずっと前から積み重なっていた

心配してくれたこと
俺の料理をおいしいと言ってくれたこと
本当は、俺を見ていてくれたこと
好きと言ってくれたこと
愛してると言ってくれたこと
格好いいと思われたくて冷たくしてたなんて、変な人だと思うけど
本当の入間さんは、少しだけ
可愛いと思ってしまったこと

全部が繋がって
そしたら
一気に溢れてしまって



『好きです』



好きなんだなぁと頭のどこかで冷静に俯瞰で見ていた
顔を真っ赤にして、恋に気付いたと言う入間さんに
不覚にも好きなのだと、気付かされてしまった




「……反則、では？」
『そう言われましても…』




都合良いということは、わかっている
避けて逃げて、好きなんて



『都合が良いのはわかってます…けど』
「都合がいい？」
『逃げて、心配かけたのに……こんなこと』



ぎゅっと手を握られる
こっちを向けと言うように



「あのですね？好きな人に好きと言われて喜ばない男はいないんですよ。…どんなに都合が良かろうと、その一言で馬鹿みたいに舞い上がってしまうんです」



そっとすくわれた俺の手の甲に、入間さんの唇が押し当てられる



「単純でしょう？」



不敵に笑った入間さん
正直、警察官じゃなくてホストに見える



「いいんですね？本当に？」
『……は、い。もう、大丈夫だって思えますから』



半分嘘
全部演技で夢なんじゃないかって思ってる
今からでも手を振り払われて冷笑を浴びせられるんじゃないかって怖い

けど信じる
運命じゃなくて、この人を信じる




「……本当の本当の本当に？」

『あの、ちょっと空気読んでもらってもいいですか？』

「だって愛しい人のヒートのフェロモンなんて嗅いだら、歯止めがきかないに決まってる！！」

『だから大丈夫だっつってるでしょ！！』

「だってこれで…本当に…」

『だってじゃない！！もうガブッとやってください！！』




兎ほど円らじゃない目が、甘く切なげに俺を見つめる
2人しかいないのに、その言葉は殆ど聞こえなくて
でも聞こえてしまって



「だって本当に、大切なんです」



この人でよかったと
不覚にもときめいてしまった

恋が始まる。(終)→←そして死ぬ。

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