【入間銃兎】運命だけど、恋じゃない。【男主】

そして破裂した。 ページ31

イイ匂いがする。

いつもの甘ったるくてむせるようなフェロモンではなくて

爽やかでもどかしくて

なんて心地良いのだろう。




『＿＿＿＿ッ！！？』





林檎のように真っ赤になって、手の甲で口元を覆う姿はとても幼くて。

ああ、まるで初恋を奪ってしまったような気持ちになってくる。





気恥ずかしさは、あった。

プロポーズをするのは初めてで、けれどあんなに無防備に近づかれたら零れるだろうが！？キスだってしちゃうだろ！！？

伝えたいと思ったし、今だとも思った。
ただ、こんなに可愛い反応をされるとは思わなかった。



唇の感触だってまだ残ってる。

そう、唇の感触。



ああ、なんだってそんな顔をするんでしょう？
可愛い。可愛すぎる。
これではまるでファーストキ、ス…………。



………。



いやいやいやいや！？
待て落ち着け入間銃兎29歳既婚者。

いやだってAだって24歳だぞ！？流石に……



……………え？？？



ふぁーすときす？？
いやそんな、まさか。
いやいやそんなことあるわけ……。



「Aさん…？」



Aは未だ真っ赤のまま、口をパクパクさせながら体をのけ反らせている。
流石にキスしたくらいで、こんなことになるだろうか？

なる、か…？

ここまでの反応するか？
するの、か？



「Aさんまさか…ファーストキ」
『言わないでぐだざい入間さんのばがぁぁぁぁ！！！！』



そして林檎は破裂した。
怒声とも悲鳴ともとれる可愛らしい声が上がった。
驚いて肩をびくりと跳ねさせてしまったが、ぽかんと口を開けた間抜け面で、俺の嫁可愛い。と思ってしまうのは最早特殊フィルター常設のため仕方ないと思う。

フィルター？違うな。
全部Aのせいだ。

なんて頭の片隅でひとりごちている間にAはすっかり卑屈になってしまったようだった。



『だっでじがだないじゃないでずがぁ…こんなオメガのおれじゃぁ女の子も寄ってこないしキモがられるしキスどころか手も握ったことないのにぃぃぃ……！！！』

「えっ」



Aはキモくない。という言葉が瞬間的に浮かんだが後半の情報量が多すぎて言葉が詰まった。

とりあえず俺がファーストキスで
そして手を繋いだのも俺が初めてで
ということは結婚どころか恋人関係も俺が初めて……？？(※恋人の過程はありません)




つまり、俺はAのハジメテを奪ってしまったのか？？(※語弊)




今度は銃兎の顔が真っ赤に染まった。

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