24:Game clear ページ24
久しぶりに入った部屋は、前と何も変わりない
一人で住むには広すぎるリビングの真ん中で
Aさんは俺を見て
「言いたいことがあるんだろ」
薄ら笑いで問うた
まだ、夢なんじゃないかとぼやける頭
でも俺は
俺は
あんたがいなくなってから
こんな夢みたいな夢、見なかった
「殴らせてください」
「いいぞ」
一歩踏み出して
拳を突き出す
肉がめり込んで頬骨が当たって
後には
首だけ背けてよろけもしないAさんと
ジンジン痛む拳を緩めた俺だけ
あんたがいなくなってから
俺は
こんなに腹立たしくて、嬉しくて
幸せな夢、見なかった
「前向けよ」
自分でもびっくりするほど低い声が出て
切れた唇を拭うAさんと目が合う
痛いともなにも言わず、Aさんは苦笑した
「馬鹿だね、お前」
一年ぶりなのに、泣きそうな声が
薄氷みたいな弱っちい声が
まるで
ずっと隣にいたみたいに感じた
唐突にAさんが、濁点が付いた声で
「あー」と叫ぶ
顔を覆う手からは感情が読み取れない
読み取らせないようにしているのだろう
「……馬鹿だなあ」
くぐもった声
俺は一歩Aさんに近づく
「ちょっと経ったらすぐ興味失くすと思ってたのになあ…」
「俺だってそんな気はしてた…けど、忘れらんなかった」
「お前、たち悪いよ」
「でも約束は約束ですよね?」
「…だなぁ」
手を外したAさんは、弱った笑顔で言った
「遊びだった、じゃ、済まされねえんだよ」
「はなっから真剣なんすけど」
「……あ、そ。じゃあさ」
今度はAさんが一歩埋めた
そんで
顔が近くなった
「……こういうことでいいんだよな」
「……ッ」
「顔、真っ赤だけど?」
囁く声も近い
「なあ、一郎」
「なんっすか…」
「俺はお前が思う程大人じゃねえし、もう火遊びじゃ済ませてやれねえから……覚悟しろよ?」
脳に直接、回路ぶち込まれたみたいな
響く声
Aさんは悪鬼みたいに笑った
「好きだ、一郎。もう離さねえ」
200人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Last(プロフ) - ショコラさん» 残り数話ですが頑張って更新再開します。お待たせして申し訳ございませんでした…! (2019年12月11日 23時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 遥翔さん» 長らくお待たせしてしまい申し訳ございません。ぼちぼち更新を考えております。ありがとうございます…! (2019年12月11日 23時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ(プロフ) - 完結出来るその日まで、待ち続けます!ゆっくり休んでください (2019年10月19日 12時) (レス) id: 66813c167e (このIDを非表示/違反報告)
遥翔 - ずっと気長に待っているので安心して休んでください! (2019年10月18日 23時) (レス) id: fbd4c1da15 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Last | 作成日時:2019年9月7日 23時