【ヒプマイ】 シークレット・バース 【男主】

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ガシッ



効果音をつけるのであればこんな感じだろうか

顔を上げた
瞬間
両手で頬を包まれる

いや、掴まれていると言った方が正しい



「…へ？」



溺れないように水面から必死に顔を出すように
つま先立ちになりながらその顔を見た

石像のような冷たい瞳

先程までの慈愛は一切無い



「月貴君」

「は、はい」

「君の恋人は誰だい」



倒れないように必死に先生の服を掴む

逃げられない
怖い



「言ってごらん」



脅迫のような言葉
震えながら、なんとか口を開く



「…せ、先生」
「違う」



ち、ちち違うのか？
じゃあなんだっていうんだ

一体何をしたいんだ
怖い
怖い




「『先生』じゃないだろう？」




目が怖い
足が痛くなってきた

ああ、そうか
そういう事か




「じ、神宮寺さ、ん…」
「名前で呼んで」




バッサリと切り捨てる

だんだんとその視線はからかうものに
しかし熱っぽく
その表情に脳が蕩ける


名前

名前で…？

いいのか？

初めてがこんなので

ああでも

月貴って呼ばれるのは

好き


まるで洗脳でもされたように
頭に浮かんだ名前を
読み上げるように、震える声でゆっくりと吐く




「じゃ、じゃ…じゃくらいひゃ＿んんッ！！？」




言い終えることができなかった理由は
言い終える前に
その口が塞がれたから

遠慮のない動作で、寂雷の腕が月貴の腰に絡みつき
既に限界を迎えていた月貴の足を支える

密着する腹部
柔らかい唇

状況を理解できずに目を回す月貴に遠慮せず
寂雷はぐいぐいと頭を押し当てる




「ふ」




余程しばらくして
ようやっと解放された体は無重力状態のようにふわふわと覚束ない足取り

結局再度腰を抱かれ、感覚を取り戻すまでコアラの親子のようにしがみついていた


一体、なんだというんだ
急に怒ったかと思えば
キス、なんて


非難がましい眼で寂雷を見上げるが
なぜか嬉しそうに微笑んでいるだけ

何がそんなに楽しいのか

その疑問に答えるように
寂雷は口を開いた




「…そうだよ。君の恋人は、私だ」




ドクドクと血液が巡る音
そういえば
こんなにはっきり、恋人だと宣言されたのは初めてかもしれない



「月貴君」



ああ、改めて名前で呼ばれると
気恥ずかしくていけない



本当に思っているのかもわからない言葉で喜べてしまうのだから

俺も単純だ

勘違いさせないでほしい



そう

どうしたって



先生も、俺のことが好きだったら、と願ってしまうから

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