能力荘の非凡な毎日 (ページ24)

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多分、俺の日常【梨葉小春】ページ24

「おい梨葉、仕事頼めるか？俺、ちょっと今日用事あってさあ…お願いっ！」

現在14:17。
会社の同僚から手を合わせられた。

まあ、普段普通に仕事をしている彼のことだ。
嘘ではないだろう…おそらく。

「ええ、分かりました。どこを手伝えば良いですか？」
「わりい、あんがと！じゃ、こことここ、それとここはちょっとだけだけどお願いするわ」
「なるほど…分かりました、終わらせましょう」
「マジでごめん、いつか奢るから！」
「いえ、そんな…」
「じゃ！」

よっぽど急いでいたのか。
僕が承諾すると、駆け足で自分のデスクへ戻ってしまった彼。

別に奢られたい訳ではない。
むしろ眼鏡を外している時間の方が楽なのだ。

…もう上がる予定だったが、彼のためなら仕方ない。
一時間以内に終わらせて帰ってしまおうと決め、パソコンに向き合った。

会社から出て20分弱歩いた所に、僕の家がある。
能力荘。
僕はそこに住んでいる。

自分の部屋の前へ着くと、隣のドアの前に一人の少女が立っていた。
隣の105号室に住む、東雲朱司という名の女子高生である。

「おや、朱司さん。こんにちは。」
「あ…小春さん。お久しぶりです。…お仕事は？」
「ええ、今日は早めに切り上げて、丁度今帰ってきたところです。朱司さんはこれからお出かけですか？」

…実際は早く終わらせたくて急いで仕事を終わらせていたのだが。

「…あ、コンビニに…」
「そうですか。ではお気をつけて。」

彼女に挨拶をし、鍵を回した。
扉を開き、玄関横の棚に外した眼鏡を置く。

「っはあ…疲れたぁ～っ！」

誰かに言うでもなくそう呟いた一言は、部屋の中にふっと消える。
…なんだか、すごく虚しい。
誰もいない中で独り言なんて言わなけりゃ良かった。

着替えてソファに沈み込んだところで、スマホを取り出しパズルゲームのアプリを開く。
最近は専らこればかりやっていて、気づけばステージ417まで来ていた。

これは、多分、俺の日常。

気づけば夕方。
そろそろ晩飯の時間か。
部屋を出て食堂へ向かえば、俺と仲の良い田中実という男がいた。

「よっ、ミノ。腹減ったなー」
「おお、コハルン！もうすぐ飯来ると思うぜ」

彼の隣に座りつつくだらん会話を繰り返していれば、食べ物が運ばれてくる。

「はーい、今日のごはんでーす」
「おおーっ！」

「唐揚げかよ、美味そー！」

唐揚げに続きサーモンマリネが運ばれてきて、俺がやかましく騒ぎ終えた頃。

外からバイクの音が聞こえてきた。