能力荘の非凡な毎日

私は痛みを受ける【陽溜 咲桜】 ページ2

昔から異端児だった自分は、変わりたかった。
優しい言葉を掛けて欲しくて頑張っても、結局は何も変わらなかったけど。

空気中の『友人』は、優しく教えてくれたのだ。
だから決意を固めて、前へ進んだ。

(私は、強くなる…！)

陽溜咲桜。現在、16歳。

■□■□■□■□

「ひいっ…！やっぱり、やっぱり怖いよぉっ…」

だがそんな決意は三秒で打ち砕けた。

この少女、陽溜咲桜は能力者である。
非才な力を持ちながらも自身に最低の評価をする彼女は今日、彼女と同じ力を持つ人間達が集う、片時雨館に来るのだ。

だが、今は頭を抱えしゃがみこみ体を丸めて居る。完全な防御の体制である。
空気中にふわふわと浮かぶ友人は、困った様な顔をしてなんとか自分を説得しようとする。
そして急に、キリ、とした顔になった。

(あ、終わった)

冷静に頭が回る。
この友人の顔は、自分を甘やさないと決意した顔だ。
パシン、と腕を捕まれる。
捕まれた部分はひやりと冷たく、この時期には有難いモノなのだが、今はまっっっったく持って嬉しくない。

「やっ、やだやだやだ！！無理っ！怖いよぉっ！」

もう絵面が素晴らしい程におかしい。
涙目になりながらずるずると見えないナニカに引っ張られる身長の低い美少女が叫んでいるのだ。

ぐい、と思い切り引っ張られると同時にドアが開く。

「どっ、どうしたんすか？」

ハスキーな声と共に、後ろを振り返った。

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