能力荘の非凡な毎日 (ページ11)

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前菜ニヒリズム【御薬袋涼雅】ページ11

にっと白い歯をのぞかせている賄いさんに向かって、俺はぺこっと軽く頭を下げると、朝飯を食った時に座っていた椅子に腰をおろした。
美少女が静かに俺の席とちょうど向かい合わせになっている椅子に腰を落ち着かせる。

賄いさんは俺らが座ったのをちらりと目で確認すると、奥の厨房から皿が二つ、コップが一つのったおぼんを両手にのせ、バランスをとるように、それでいて踊ろうような軽い足取りで俺らのテーブルへとやってくると、ストンとおぼんを俺と美少女の前に置いた。
賄いさんは、「さあ、召し上がれっ！」と大きめの声で云って再びほおを緩めて口角をきゅっとあげた。笑顔の完成だ。

　「！」
俺は、皿の上にのせられた料理を一瞥するなりひゅっと息を呑んだ。
なんだおれ、すっげーうまそう！
まず、オーラが違う。皿の上の料理から、家賃三万のアパートの賄いのレベルとは思えないくらいの、高級料理店のような雰囲気が醸し出されている。
向かいの椅子に座っている美少女も、目を輝かせて食い入るように料理を見つめている。

そりゃそうだろう、なんたってすげーうまそうな輝きを一品一品が放っているのだから！
賄いさんは吃驚仰天をそのまま形にしたような反応を取っている俺らに、料亭のメニューを読み上げるかのように高らかに、それであってちょっと気取った云い方で云う。

　「本日のメニューは、ツナとノリの玉ねぎ和風パスタ・シーザーサラダ・レモンティーでございまーす」

俺が料理に疎すぎるからか、一瞬頭の検索エンジンがバグを起こして真っ白けにフリーズした。
が、すぐさま再起動を果たす。
　「いただきます！」
俺はパチンと両手を合わせて料理にも賄いさんにも頭を下げた。

　「パスタうめぇ～！」
　「美味しいです…！」
うまい！うますぎる！
一口食べるたびに、暴力的な幸福が俺を襲う。
これまたシーザーサラダもうまい！野菜の鮮度やドレッシングの具合やなんやらいろいろ完璧すぎるぞ、こりゃ！
俺は勢いに任せてとにかく飯をかっこんだ。