天使の君 Kaito.Mi ページ22
『ただいまー。』
今日は日曜日。のはずだ。
なのに、私はスーツを着て夜の7時に帰ってきた。
……まあ、この世の中だから若手は不規則な仕事もやらなきゃいけなくて。
これでもう5回目くらいかなぁ。
はぁ、とため息をついて1日一緒に歩いた靴を脱ぐ。床に揃えて置くと、リビングに繋がるドアがガチャっと開いた音がした。
「おかえり、A。」
振り向けば優しく微笑んだ海斗がいる。
……これは、ちょっとお酒飲んだな？
でも私の中ではお酒を飲んだ海斗は天使だ。
『…疲れた、。』
そう言うと、海斗はふふっと笑って両手を広げた。
でも私は玄関でハグするなんて、ちょっと恥ずかしくて固まっていたら、そのまま私を迎えに来るようにハグしてくれた。
1日働いた私には心にジーンと染みて、思わず後ろに手を回すと、頭を優しく撫でてくれる。
「お疲れ様。頑張ったね。」
『……ありがと、』
「よーく頑張りました。」
きっと海斗は分かってる。
私の特効薬がハグだってこと。
頭をポンポンとリズム良く撫でてくれるから、色んなものがスーッと消えていく。
今日、頑張ったかいがあったもしれない。
「ご飯食べる？」
『作ってくれたの？』
「……やっぱり俺の作ったの心配？」
『そんなことない！
むしろ楽しみ。』
「そっか。」
ふわっと笑うと、準備してくるわって嬉しそうにキッチンに向かった。
…これがずっと続けばなぁ、なんて思ってる自分がいるからフルフルと首を振る。
こういう日も、たまにあっていい。
そういうことにしておこう、そう決めた。
「あ、忘れ物した。」
突然戻ってきたと思ったら、私の方に近づいて、気づいたら目の前に海斗の綺麗なまつ毛があった。
唇がそっと離れれば、海斗は耳が赤くなっていた。
「ご飯、食べよっか。」
本の少し照れて視線が合わない海斗が可愛くて仕方ない。
てか、忘れ物って言ってキスなんて可愛すぎて何も言えない。
やっぱり訂正。
いつもの海斗だって好きだけど、こんな日いつでもあり。
こんな可愛い海斗が独り占めできるとか幸せすぎる。
『うん、食べよっか。』
微笑んで私もそう返事をした。
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作者名：菜緒 | 作成日時：2020年11月22日 15時
