理想 ページ34
「A殿、もう一つ聞いて良いか？」
「何でしょう」
義勇さんからの問いかけに、余計な考えを振り払う。
「雪乃殿の母親についてだが、彼女には一切この件について他言しないで頂きたい」
再び真剣な表情になった彼に、先ほど少し和んでいた空気が一変する。
「それは、義勇さんはあの親子が会うと良くないことが起きると思っていらっしゃるのですか？」
「そうだ」
一点の迷いもない彼の瞳から私は目を反らす。
「私も、むやみに話をして二人を引き会わせるのは良くないと思っています」
「ならば…」
「けれど思ってしまうのです。雪乃も母親にならば襲いかからないかもしれない。鬼になっていても家族と一緒に暮らしたり、私とまた仲良く出来るかもしれない。と」
言えば義勇さんの声が低くなる。
「先ほども言っただろう。親、兄弟関係なく鬼は人を喰らう」
「ですが、もしかすると…」
「鬼が人を喰らう限り、そんな日は来ない」
「…。」
はっきりと言いきる義勇さんに私は言い返すことが出来ない。
「A殿」
すっと椅子から立ち上がった義勇さんが私の前に立つ。
「雪乃殿と会いたいだとか、話がしたいと考えているのなら今すぐその考えは捨てるんだ」
「…っ！」
義勇さんは私の考えを読んでいたのだろうかと思うほど、痛いところをついてくる。
「彼女はもう人間ではない。人の言葉を聞き入れる事はない。例えそんな事があったとしても、それは人を喰らうために相手を惑わす手段でしかない」
「そんなの、話してみないと分かりません」
「今までがそうだった」
「雪乃は違うかもしれませんわよね？」
言えば黙り込んでしまった。
義勇さんなら分かってくれるかもしれない。
そう心の何処かで思っていたのだろうか…
考えを否定されて涙が出そうになるのを堪える。
「義勇さん申し訳ないのだけれど、話しはここまでよ。そろそろ帰らないと父に怪しまれてしまいますから」
気が付けば夕日に照らされて空が赤く染まっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 248人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月見(プロフ) - はぁぶ。＠３ちゃいさん» コメントありがとうございます！１日１話ゆっくりですが更新していきますので、完結までよろしくお願いします！！ (2020年10月26日 6時) (
レス) id: 9eeadbb9f3 (このIDを非表示/違反報告)
はぁぶ。＠３ちゃい - 普通に続きが気になる…作者さんのペースで更新頑張ってください！応援してます！ (2020年10月25日 22時) (レス) id: 4dd2fcae8f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：月見 | 作成日時：2020年9月24日 19時
