哀しいkiss 2

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太輔side


太「入って…」






「……」





太「頼むよ、わかるだろ？」





ゆっくり、静かに閉まっていくドア



Aがこの部屋を出て行って…半年以上








太「あの日のまんまだよ」






部屋に上がろうとしないA


そりゃそうだ、俺たちは別れたんだから
それも、別れを告げたのは俺







太「少しでいい…一緒にいてくれないか？」






「……」






太「このままじゃ…今日も食事を取れそうにないんだ…」






「…でも…」





太「お願いだ、俺だって
もう、病院には戻りたくない…」







太「頼む…」






太「本当は、今日は渉が鯛茶漬け作ってくれるはずだったんだけど…」

このままじゃ、入ってくれそうにない
重苦しい空気を払拭したくて、スマホを開いた






太「あー、すげぇ、ライン来てるわ、笑」





太「ちょっと、すぐに連絡したいから、入って」





そう言ってAを中に招き入れた



初めてこの部屋に来た時もそうだったな


この部屋を私に？って戸惑ってる君を
半ば強引に中に入れたっけ





渉にダイヤルしながら、Aをソファに
座らせた


無意識のうちに、以前自分が座っていた場所に座ったA




半年以上、そこはぽっかり空いていたのに
今となってはそこにAが座るといなかったのが、嘘のような気になる







冷蔵庫を覗きながら、渉に今日の話をした
勿論、倒れたことは話さなかった
ただ…ちょっと体調が悪かったから、休んでて
連絡出来なかった、渉からのラインに気づかなかった、って…渉ならすぐにわかるような嘘をついた






太「何か飲む？」





冷蔵庫の中には、Aの好きな飲み物が入ってる…




太「お水？それとも…なっちゃん？」






「…え、？」



それを聞いてAが、今日初めて笑った






「なっちゃん…？」




アルコールも炭酸もダメなAが
好んで飲んでたオレンジジュース





でも、笑みはすぐに曇った







「もしかして…ずっと？」






太「…ん、」






「どうして……」







太「何となく…」






「もう、半年も経つのに…」







太「だよな、」




太「女々しいよな…」





「………」








太「でもさ…やめらんなくて…」




「…太…輔」







太「冷蔵庫ン中もバスルームもあの頃のまんまだよ…」






太「何一つ変わってない…」



グラスもカップも
シャンプーも…化粧水も全部あのままだよ、
変わってないよ

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