哀しいkiss 2

54 ページ22

太輔side

渉「大丈夫か？太輔…」





移動車に乗り込んですぐに渉が声をかけて来た

舞台挨拶とレギュラー番組がある玉と宮を残して
今日、東京に帰る5人を乗せたワゴンが走り出す



終演直後はまだ薄暗い感じだったのに、
今はすっかり日が落ちて、ドームの周りはバスを待つ長蛇の列と地下鉄の駅に向かう人の波が出来てる




みんな…楽しんでくれたかな
一人一人の表情を、薄いカーテン越しに見つめる






渉「太輔？」

ライブ中、いつになくハイテンションだった俺
そんな俺を渉が心配そうな顔で覗きこむ




渉「大丈夫か？」





太「…大丈夫…」





太「ごめん、」

車窓から視線を外してゆっくり目を閉じた



ドラマがアップして、ライブも福岡の後は
大阪まで間が空く
仕事が忙しい時は、気を張って大丈夫な分
オフになるとネジが切れたように俺は不安定になる







渉「明日は休みだから…俺、飯作ってやろうか？」





太「…笑」





渉「ほら、宮が差し入れしてくれた鯛茶漬け
作ってみたいんだよね…」




ライブの差し入れとして
宮が馴染みの店を読んで振る舞ってくれた鯛茶漬け

確かにあれは美味かった
玉なんて三杯も食べてたもんな





渉「な？」


渉が心配してるのが手に取るように分かった




渉「いやぁ、あれさ魚を一回焼いて出汁とるのかどうか試してみたいんだよね…」





笑



太「あー、そうだな…」





太「じゃぁ、夜…作りに来てよ」







博多、天神の街には
ライブTシャツを着たファンのみんなが溢れてた
煌びやかな街の灯り
楽しそうな人の波
旨そうな店の暖簾と看板





ライブが終わった高揚感と、温かな街の風景が
バランスを崩して壊れそうになっている
俺の身体と心を辛うじて支えていた

55→←53

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す