哀しいkiss 2

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太輔side

居てもたっても居られなくなって
運転席から飛び出した







「…！？」


となりに座ってきた俺に驚いた君





「…藤ヶ谷…さん？」

涙を湛えた瞳が大きく見開く








太「泣かないで…」



気がつくと、その身体に手を伸ばしてた





何も考えられなくて…ただ泣いてる彼女を
守りたくてその身体を抱きしめた








太「泣かないで…」





その言葉しか出なくて…





太「君は悪くない…」







太「何も悪くないよ…」






きっと嫌がって暴れるだろうと思ってた君は
俺の腕の中で、じっとしていた





麻酔の為に思うように動かない腕と
憔悴しきった身体と心は、俺からの抱擁を
拒否する力さえも失ってるようだった







太「君は悪くないよ」








「…ん、ッ…」







「…ッ…」





ほんの2、3時間前に
君の事は、もう諦めようと思ったはずなのに…



それは、もう今となっては出来なそうだった





腕の中で、俺に身を委ね、小さな肩を揺らす彼女

不安と自責の念に押しつぶされそうなか弱くて
愛しい人







太「帰ろ」






本当はこのままずっと一緒にいたいけど
それはきっと無理だろうから


それなら、早く君を休ませてあげたい







「…あ、れ…」




太「何？」





「鍵が…」



太「え？」






「……」






太「？」







「……鍵…ないです、家の…」



へ？







「ロッカーに付けっ放し…」





？






「早番の鍵とロッカーの鍵、家の鍵…全部くっっいてるんです…」







「それ…」







そうか、店長さんが荷物を持って
来たから店に忘れて来た、ってこと？






「どうしよう…」




.






.






「…私…」



「家に帰れない…」






＊

あの日君は、結局俺のマンションに泊まった



もう何も考えられなくなっていた彼女…

全ては、憔悴しきった身体と心のせいだった








ー何か作るね

そう言ってキッチンに立った俺が、炒飯とスープを
リビングのテーブルへ運ぶ






太「味は自信ないけど…」



炒飯の皿をテーブルに置いて、ソファにかけた君を見た







え…






トクン

心臓が跳ねた






少し傾いた身体と…呼吸に合わせて揺れる睫毛



ー寝ちゃった….の？





まだ、何にも話してないし



何もしてない


お風呂も夕飯も…





それなのに…



ずるい





そんな可愛い顔して無邪気に眠るなんて

ずるいよ

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