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哀しいkiss 29 ページ46

太輔side

「…!」





「A!!」






伸ばした手が空を切り、目の前にはいつもの
白い天井だけが映る






また…か







じっとりかいた汗のせいか、呼吸までもが
苦しくなる






手に握りしめた白いレース


うぶで、幼くて…赤ちゃんみたいに無垢なA
の為に、俺が買い与えたベビードール



「…やだ、変態…」って笑ったね



「ロリ…コン!」って








でも…

俺が求めれば、頬を真っ赤に染めながら着てくれた





大事に大事にしてたA

嫌われたり、傷つけるのが怖くて、何ひとつ冒険なんて出来なかった


そんな俺の唯一の冒険





薄いシルクに綺麗な花模様の刺繍
純白のベビードールは…
俺にとってAそのものだった






いつか…
同じように純白に刺繍のあしらわれたウェディングドレスを着せたい、そんな俺の願いがこもってたんだ







もう微かになってしまったAの匂い



ボディソープでも、シャンプーでも…
勿論、香水でもない


いつも緑と花に囲まれてるからこそ、その身体に
染み付く香り






…A






その布に顔を埋め、大きく息を吸うと
思い出すAの笑顔

と、同時に…俺は涙を流す







何度こうして泣いただろう




俺が、Aに与えたこの部屋に来て
Aと過ごしたこの部屋、このベッドで
君を想い…何度…。









Aは、他に好きな奴が出来たんだ

俺を裏切り、他の奴と身体の関係を持った

俺を捨てて、そいつの所に行ったんだ





そう自分自身に言い聞かせて


忘れよう

諦めよう、と何度思っただろう







時が経てば
時間さえ経てば、全て忘れられる




想いも薄らぎ、消えていく

そう思ってた







渉に、この部屋を残してるから
忘れられないんじゃないか、って言われて
契約を切るようにも言われた






でも…契約を切るどころか、

この部屋に来ることさえやめられなかった









渉に言われて、この部屋に来ないようにした一週間後…俺は過労でダウンした





自分の部屋では眠れず、夜になると泣き続け、
勿論食事も取れなくなった








俺は…


今は誰もいない空っぽの部屋
Aがここにいた、その記憶と軌跡ゆ
なくすだけで、生きていけないんだ

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設定タグ:キスマイ , 玉森 , 藤ヶ谷   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:トウコ | 作成日時:2019年5月25日 18時

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