哀しいkiss 6 ページ23
「…裕…太…」
与え続けたキスが、与えられるキスに変わる
君が、俺の名前を呼び
握り合った指先を離して、俺の髪を掴む
「…裕太…」
君が…呪縛から放たれる時
太輔の呪縛から…
優しい慈しむようなキスが、俺の唇を包む
柔らかな唇が、俺のそれに張り付いては離れ、
離れてはまた、重なる
俺がそうしたように、下から掬い上げ
唇全体を包み、そして小さなリップ音をさせて
俺を弾く
あの日と同じ
ベッドの上、互いに向かい合って座り
何度も何度もキスをした
何度キスしても足りなくて
もっと…欲しくて、離れると寂しくて…
重なると嬉しくて幸せで…
永遠に感じるくらいキスをした
あの瞬間から…俺たちは始まった
裕「A…」
もう…我慢出来ない
キスだけじゃ、足りない
少し痩せた身体を、ゆっくりベッドに沈めていく
.
.
ーあんまり胸はおっきくないんだけどね
何でそんな話になったのか分からないけど
太輔がそう言ってた
ー反応がウブで可愛くてさ
照れながら太輔が言ってたっけ
ー産毛がさ、額の両脇にだけあんのよ
フェチだからな
君をベッドに沈める時、俺はいつも太輔の言葉を
思い出す
ー大事にしてんだ
細めた目
ー時々めちゃくちゃにしてみたいとか思うんだけど
出来ないんだよね
困ったふりした幸せな表情
ーなんにも思った通りに出来ないんだよね
大好きで、大切で…
太輔にとって唯一無二の存在、それがAだった
それは………
俺だって…分からなかった訳じゃない
.
.
.
でも、諦められなかった
止められなかった
だって、出逢ったのも好きになったのも
俺が先だったんだ
太輔の大切な人だと嫌と言うほどわかっていても
俺は、君を想うのをやめられなかった
俺は、本気だった
全てを失っていい、そう思ってた
仕事も…仲間も…全部無くして構わない
Aがいれば…それでいいって思ってた
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作者名:トウコ | 作成日時:2019年5月25日 18時