哀しいkiss 6/8up ページ18
裕「どうして…」
裕「……いつもそんな…顔するの？」
「…ぇ…」
裕「凄く…哀しそうな顔…」
裕「今にも…泣き出しそうだ…」
.
.
「そんな事ないよ…」
「気のせいだよ…」
無理に笑顔を作った君が、ベッドに入ってくる
「気のせい…」
ドライヤーで乾かした髪は、まだ少し濡れてる
裕「そう、なのかな…」
君の真意を見つめたくて、顔を覗き込むと
君は、俺の胸に顔を埋めた
「…裕太の匂いがする…」
裕「同じボディソープだよ？」
「…ちが…」
「裕太の匂い…」
「甘い…、裕太の匂い…」
胸元に埋めた鼻先から、くすんと鼻をすする音
裕「A…？」
華奢なその身体を離そうとするけど、できなくて
白くて細い指先は、俺のグレーのシャツを掴んで
離さない
裕「ほら…やっぱり…」
ぐすっ
ちらり、光ったのは
鼻先じゃなく、目尻に光る涙
わかってる…
君に哀しい顔をさせたのも
君に涙を流させるのも…俺
悪いのは、俺なんだ
裕「ごめん…」
.
.
俺が、親友の彼女だった君に横恋慕して
親友から奪ったせい
拒み続けた君に、俺は無理矢理キスをした
そして…押し倒し…自分の物にした
心が俺にないってわかってて
泣きじゃくる君の身体の隅々までを愛して自分の物にしたんだ
裕「後悔してる？」
そう聞いたって、
君が本心を言う訳ないのに
裕「俺を、選んだこと…」
嘘をつけない君が、アイツと一緒にいられなくなるのなんてわかってたのに
裕「…A？」
そう聞いても…
君の答えはいつも一つしかないのに
「…キスして…」
胸に顔を埋めたままの君が呟く
「愛してる…」
「愛してるの…裕太を…」
その言葉はまるで、Aが自分自身に
暗示をかけるみたいに繰り返される
「愛してる…」
A…
俺が守らなくてはならない人
俺のせいで全てを失った人
Aには俺しかいない
裕「顔…上げて…A」
裕「キス…しよ」
裕「俺がいるよ…」
裕「Aには、俺がいる…」
裕「ずっと、側にいる…」
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作者名：トウコ
| 作成日時：2019年5月25日 18時
